研究課題
小児の口呼吸は、口腔周囲の機能や形態に異常を及ぼす悪習癖の一つである。本研究では、原因を追求した上で、幼児期の口唇閉鎖訓練が口呼吸を改善し、顔面軟組織の成長を適切に導き、全身状態を向上させることができるかを検証すること、ならびに口呼吸分類のスクリーニング表作成を目的とした。調査データの収集においては、研究期間全体を通して、小児の大規模集団を対象とし、口呼吸に関連があると考えられる計53項目に関するアンケート調査を継続した。同時に口唇機能の評価として口唇閉鎖力を計測し、顔面軟組織形態の評価としてレーザースキャナを用いて顔面形態を計測した。また、口唇閉鎖訓練による機能的介入を行い、実施状況の視察、指導を継続しながら、同時にデータ収集を行った。収集したデータより、口呼吸が顔面軟組織に及ぼす形態的影響を調査するために、まず小児の顔面軟組織の成長変化について解析した。次に口呼吸小児を対象とした顔面軟組織の3次元形態解析の結果、3歳の時点で既に鼻の扁平化や口唇の突出が生じる傾向があり、比較的早期に顎顔面領域の成長に悪影響が生じることも明らかとなった。一方、口呼吸と口唇閉鎖力の関連性を解析したところ、口唇閉鎖力は口呼吸の有無に影響を与える因子であることが明らかとなり、同時に口唇閉鎖力の成長変化について、各年齢の標準値を導出することにも成功した。また、小児の口呼吸は年齢が上昇するほど増加傾向にあり、未就学児と学童期小児を対象とした調査と比較したところ、口呼吸を有する児童は未就学児よりも、より多くの全身的弊害に関する因子を抽出する傾向があった。さら解析を進めたところ、口呼吸に関連する項目は複数の因子に分類できることも示唆され、口呼吸分類スクリーニングの一助となる有用な知見を得ることに成功した。
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Archives of Oral Biology
巻: 92 ページ: 57~61
10.1016/j.archoralbio.2018.03.012