研究課題/領域番号 |
16K11810
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
窪田 直子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (40569810)
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研究分担者 |
佐藤 正宏 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療研究開発センター, 教授 (30287099)
稲田 絵美 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (30448568)
野口 洋文 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50378733)
齊藤 一誠 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90404540)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生体内遺伝子導入 / PiggyBacシステム / CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒトの歯根形成に関わる遺伝子の探索、その機能解明を最終目標として、独自に開発した方法を用いて幼若マウスの歯根形成端周囲組織に遺伝子(DNA)を直接注入することで、歯根形成に重要とされるFGF-10やIGF-Iの機能をin vivoで模索する。また、トランスポゾンを用いた導入遺伝子の宿主染色体への挿入による遺伝子発現の定着化、最近開発された次世代型KO技術による標的遺伝子のKOの可能性を探る。 具体的には、幼若(生後15日頃)B6C3F1メスマウスの歯根形成端周囲組織に遺伝子(DNA)を注入し、直ちに注入部位周辺を電極で囲み、電気穿孔をかける方法(gene transfer to peripheral tissues surrounding tooth、 GTPTと呼ぶ)を用いる。in vivoにおける歯根形成端周囲組織での持続的遺伝子発現法を確立するため、外来遺伝子を10~100倍の効率で宿主細胞ゲノムに組み込ませることが可能なpiggyBac(PB)トランスポゾンシステムを用いて、導入遺伝子を導入部位で長く存在させ、持続的な発現を実現させることを目指す。一方、ゲノム編集法の一つCRISPR/Cas9系の核酸を導入し、生体内で標的遺伝子のKOが可能かを明らかにする。 平成28年度にはPBシステムによる遺伝子の長期持続発現に関する検討を行い、初代乳歯歯髄細胞に蛍光遺伝子(EGFP cDNA)内蔵のトランスポゾンと transposase発現ベクターをNeon electroporation system(Invitrogen社)を用い共遺伝子導入を行った。その結果、効率的な遺伝子導入安定株の取得、導入遺伝子の長期発現が認められ、PBシステムの有効性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、前年度のPBシステムによる遺伝子導入実験を継続し、in vivoにおける歯根形成端周囲組織での持続的遺伝子(EGFP cDNA)発現を検討した。その結果、遺伝子導入後1週間、1.5ヶ月を経過しても遺伝子発現の程度は導入後1日目に較べると格段に低下するが、持続的なEGFP発現を認めた。更に、導入遺伝子の存在も歯根形成端周囲組織から抽出したゲノムDNAを用いたPCRで確認した。一方、標的遺伝子を破壊するためのCRISPR/Cas9系の作動性もヒトやブタの培養細胞を用いて検討した。標的遺伝子には、dentin形成に重要とされるdentin sialophosphoprotein(Dspp)遺伝子を選んだ。Cas9とgRNA(Dspp遺伝子を標的としたguide RNA)を同時に発現するベクターpCGSap1-Dsppを構築し、これと hygromycin B耐性遺伝子発現ベクター + EGFP発現ベクターをヒト乳歯歯髄細胞に共遺伝子導入した。その後、細胞をhygromycin Bで選別。薬剤耐性株を取得した。この中には、pCGSap1-Dsppも導入され、宿主細胞ゲノム内のDspp遺伝子が破壊されることを期待し、ゲノム解析を行ったが、Dspp遺伝子に変異は認められなかった。おそらく、用いたgRNAがうまく機能しなかったと推定される。しかし、ブタ細胞では他のgRNAを用いて標的遺伝子破壊に成功している(Sato et al., Int. J. Mol. Sci. 2017, 18, 2610)。故に、CRISPR/Cas9系を稼働させるための条件設定もその作動性も経験し、本番たるGTPTを用いたin vivoゲノム編集に十分準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は、Cas9、gRNA(FGF-10やIGF-I 遺伝子を標的としたguide RNA)、ZsGreen蛍光遺伝子を同時に発現するベクター(pCas9/ZsGreen/FGF10 or pCas9/ZsGreen/IGF1)を構築し、幼若B6C3F1メスマウスにGTPT法にて導入する。遺伝子導入1週目にて注入組織を採取し、目的遺伝子の変異の有無、その発現の有無を分子生物学的、免疫組織化学的に調べる。一方、GTPTにて導入された PB系ベクターの歯根形成端周囲組織における発現を組織学的に検討する、PB系ベクターが当該組織ゲノムにPBのAATT認識配列を介してintegrationされているかをSplinkerette-PCRにて確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度以降は分子生物学的解析や組織標本作製を行う機会が増える見込みである。そのため、次年度使用額として翌年度分に助成金を請求した。 平成30年度の研究費使用計画は以下の通りである。 物品費:細胞培養用試薬、分子生物学用酵素、大腸菌培養用試薬等の消耗品、旅費:日本小児歯科学会、歯科基礎医学会学術大会の参加と研究打ち合わせ、謝金:研究補助の謝金、その他、論文校正料、投稿料を計上した。
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