研究実績の概要 |
本研究の目的は、上顎正中過剰歯を発症した日本人を対象として、上顎正中過剰歯発症に関与する遺伝子を見出すことである。被験者として、口腔内診査、エックス線検査および問診により家族性に上顎正中過剰歯を発症した者24人を上顎正中過剰歯群とし、 コントロール群は、エックス線検査および問診により上顎正中過剰歯の家族歴が無い者24人とした。ゲノムDNAの抽出は、治療のために抜去した上顎正中過剰歯に付着した軟組織、 または唾液に混入する口腔内細胞から得た。 上顎正中過剰歯の発症には、歯の初期発生に関わる遺伝子群が関与しているという仮説を立て、歯の初期発生に関与することが報告されている遺伝子である、TP63、 PITX2、 LEF1、 BMP2、 BMP4、 FGF9、 FGF20、 WNT10A、 WNT10B、 EDA、 EDAR、 MSX1、 MSX2、 PAX9、 LHX6、 RUNX2の16遺伝子にある一塩基多型(Single nucleotide polymorphisms:SNP)を調査した。これらの遺伝子で日本人において高頻度で出現する各1SNPを用いてTaqman PCR法にてジェノタイピング解析を行った。 各SNPsのジェノタイプ頻度および, アレル頻度と上顎正中過剰歯発症の関連の有無を解析した。 上顎正中過剰歯群とコントロール群間で、日本人に高い頻度で現れるSNPのジェノタイプおよびアレルの頻度について調査したが、 両群間で有意な差は認められなかった。 これらの結果から、上顎正中過剰歯発症に関与する遺伝子マーカーは、高頻度のSNP箇所ではなく、より稀な頻度で現れる他の多型の可能性が示唆された。
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