研究課題/領域番号 |
16K11819
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
飯沼 光生 朝日大学, 歯学部, 教授 (70184364)
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研究分担者 |
東 華岳 産業医科大学, 医学部, 教授 (20273146)
村林 知香 朝日大学, 歯学部, 助教 (50610367) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 母胎ストレス / 仔マウス / 咀嚼 / シナプス後肥厚 / グルココルチコイドレセプター / 認知機能 |
研究実績の概要 |
前年度までに、妊娠期にストレスを加えた母マウスから生まれた仔マウス(S群)と妊娠期ストレスに加え、その間に咀嚼運動をさせた母マウスから産まれた仔マウス(S/C群)、ストレスのない母マウスから産まれた仔マウス(C群)の3群で実験を行い、S群はS/C群や C群と比較して、Morris 水迷路学習テストで空間認知能が低下し、海馬CA1領域での ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、2,3サイクリックヌクレオチド3ホスホジエステラーゼ(CNPase)の免疫染色像で、オリゴデンドロサイトが減少し、神経細胞やミエリン鞘の透過型電子顕微鏡での微細構造の観察で、S群は核を含む圧縮された細胞などの変性が多く認められ、ミエリン鞘の厚さ(髄鞘の外径に対する内径の比)で薄いことが認められ、伝達能が低いことを明らかにした。S/C群とC群の間では差は認められなかった。 そこで、今年度は引き続き、透過型電子顕微鏡でシナプス後肥厚の長さを測定した。その結果、S群では有意に短く、シナプス効力、シナプス可塑性の変化、伝達速度に影響を与えていることが明らかになった。高齢マウスや記憶障害ラットで顕著に減少するといわれていることから、S群にもこの影響が現れていると考えられる。S/C群とC群の間では差は認められなかった。 次に、仔のストレス反応への脳の脆弱性に及ぼす影響を検討するため、海馬におけるグルココルチコイド(GC)レセプターmRNA発現量をin situ hybridyzation 法により行った。 その結果、S群で減少しているようにみえたが、染色像だけでは差がはっきりとわからないため、リアルタイムPCR法にて定量解析を行った。その結果、GCレセプターはS群で有意に減少していた。このことから視床下部ー下垂体ー副腎皮質系(HPAaxis)の負のフィードバック機構が障害されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各実験群で、海馬CA1領域の神経微細構造について透過型電子顕微鏡を用いてシナプス後肥厚の長さを形態学的に観察した結果、ほぼ予想通りの結果が得られた。 また、仔のストレス反応への脳の脆弱性をGCレセプターmRNA発現量で検討した結果も予想通りであった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は前年度に引き続き、仔のストレス反応への脳の脆弱性に及ぼす影響を検討する。HPA系が障害されると仔の脳は新たなストレスに対して制御核である視床下部室傍核(PVN)に過剰な副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、アルギオバゾプレシン(AVP)を分泌し、軽度なストレスに対しても過敏な反応を呈するストレス脆弱脳が形成されるといわれている。このため、新規ストレス負荷前後の視床下部でCRHmRNA、AVPmRNAの発現量の定量解析を行う。 これらをまとめることで、妊娠中のストレスに対し、咀嚼運動を行うことにより、仔の妊娠ストレス性脳障害を抑制できることを証明する予定である。 なお、第27回国際小児歯科学会でも発表を行う。
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