研究課題/領域番号 |
16K11822
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮治 裕史 北海道大学, 大学病院, 講師 (50372256)
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研究分担者 |
田中 佐織 北海道大学, 大学病院, 講師 (90344522)
加藤 昭人 北海道大学, 歯学研究科, 助教 (40507571)
中塚 愛 北海道大学, 大学病院, 助教 (00547648)
西田 絵利香 北海道大学, 大学病院, 医員 (50779882)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオミネラリゼーション / バイオミメティック法 / リン酸カルシウム / アパタイト / スキャフォールド(足場材) / ナノ構造 / コラーゲン / ラット |
研究実績の概要 |
Bone tissue engineeringにおいて,高機能な足場材(スキャフォールド)の開発が求められている.我々はこれまでに,低融点材料にも適応可能なリン酸カルシウム(CaP)成膜技術であるバイオミネラリゼーション法を改良して,様々な材料への適用を図ってきた.本研究では改良バイオミネラリゼーション法を用いてコラーゲンスキャフォールド表面にナノ構造化リン酸カルシウムの析出を試み,生物学的特性について詳細に検討した. コラーゲンスキャフォールド(テルダーミス,6×6×3 mm)を酸素プラズマ親水処理後,CaおよびP溶液で処理してCaPプレコートを行った.その後CaP過飽和溶液中に2日間浸漬し,洗浄乾燥して試料とした.コントロールには未処理のコラーゲンスキャフォールドを用いた. SEM観察の結果,試料表面および内部にナノ微細構造を呈する析出物が付着しているのが観察された.試料からはEDX分析よりCaとPが検出され,またXRD分析によってアパタイトが検出された.次に骨芽細胞様細胞を用いた細胞培養試験を行った.その結果,コントロールに比較してナノ構造化スキャフォールドへの良好な細胞付着を認めた.しかし細胞増殖性は低下した. 次に,ラットを用いた埋植実験を行った.背部皮下へ埋植した結果,ナノ構造化アパタイトスキャフォールド内部に線維芽細胞や巨細胞のイングロースを認め,血管様管腔構造も数多く観察された.細胞侵入率は75%であり,コントロール(32%)に比較して高い値を示した.またラット頭蓋骨上へ埋入した結果,既存骨から連続する新生骨形成が認められた.コントロールでは新生骨はほとんど認めなかった. 以上より,本バイオミネラリゼーション法によってコラーゲンスキャフォールドにアパタイトのナノ表面構造を付与することができ,細胞親和性や細胞侵入性,骨増生効果を向上できることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画にしたがって,順調にタイプIコラーゲンスキャフォールド表面へのリン酸カルシウムナノ構造体の構築に成功し,この構造体がアパタイトであることが同定された.生理活性物質の内包化に関しては細かい条件設定が終了し,現在施行中である. また,小動物を用いた生体適合性試験も順調に行われ,背部皮下と頭蓋骨上の組織学的評価を順調に進めている.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は概ね計画通り推進する予定ではあるが,ナノ構造化アパタイトスキャフォールドの細胞培養試験の結果,細胞増殖性が低下したことから,アパタイトコーティングによって付着する細胞のdifferentiationが促進された可能性が考えられ,RT-PCRの評価を追加する予定である.また年度後半から大型動物を用いて歯周病モデルへの応用を検討する予定であり,年度前半に生理活性物質内包タイプのスキャフォールドを用いたラットの追加データを取得して最適条件を決定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ナノ構造化アパタイトスキャフォールドへの生理活性物質の内包実験において,若干の遅れが生じたため試薬購入費等で次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
生理活性物質の内包実験は既に順調に施工されており,評価も円滑に進むことが考えられる.試験用試薬購入を進めており,金額も少額であることから速やか使用する予定である.
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