研究課題/領域番号 |
16K11828
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三木 康史 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10598395)
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研究分担者 |
北村 正博 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (10243247)
竹立 匡秀 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (60452447)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯根膜 / 非神経性コリン作動系 / 塩化カルプロニウム / アセチルコリン |
研究実績の概要 |
再生医療において様々な生物学的製剤が広く臨床応用されようとしている。しかしその性質上、安全性を担保する為に厳しい基準をクリアする必要があるとともに高コストである。歯周組織再生治療においても安全性が高く低コストである低分子化合物の応用を検討することが求められている。歯根膜細胞にはコリン作動系構成要素が発現しており、歯周組織における恒常性の維持に関与しているものと考えられる。そこで血流改善薬として臨床応用されているコリン作動薬の塩化カルプロニウムに着目し、同薬が歯周組織の治癒・再生に及ぼす影響をin vitro, in vivoの系を用いて解析を行ってきた。平成29年度は歯肉上皮細胞において様々な非神経性コリン作動系要素が存在するか否かRT-PCR、免疫化学染色法を用い検討を行った。その結果アセチルコリンを生成するための酵素であるChAT(choline acetyl transferase)、分解する酵素であるAChE(acetylcholine esterase)、貯蔵するのに必要なVAChT(vesicular acetylcholine transporter)およびムスカリン受容体がmRNA、タンパクレベルで発現が認められるとの結果を得た。またアセチルコリンが歯周組織構成細胞における炎症に及ぼす影響の検討を行った。培養した歯肉上皮細胞に様々な濃度のアセチルコリン存在下でPgLPS(Porphyromonas gingivalis lipopolysaccharide) 刺激をし炎症を惹起したところ、低濃度アセチルコリンは炎症性サイトカイン(IL-8)を抑制する結果となった。これはアセチルコリンが歯周組織局所の炎症を制御している可能性があることを示唆していると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯根膜細胞だけでなく歯肉上皮細胞においても非神経性コリン作動系構成要素が存在し、また歯周組織の炎症の制御に関わっている可能性が示唆された。また頭蓋骨欠損モデルを用いて、塩化カルプロニウムを同欠損部へ局所投与し骨新生を誘導する効果を発揮し得るか否かに関する検討については、骨新生を促進するとの結果が得られ、現在絹糸結紮を用いたラット実験的歯周炎モデルを用いて同分子の効果を検討中であるが、絹糸結紮によって形成される歯周組織の欠損の大きさが一定でなく評価が難しく、試行錯誤中である。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroではアセチルコリンが歯根膜細胞、歯肉上皮細胞、歯肉線維芽細胞、骨芽細胞の増殖・分化および炎症の制御に及ぼす影響を検索中である。in vivoでは現在ラットに新しい機材を用いて歯周組織骨欠損の作製を検討しており、そのラットを用いて塩化カルプロニウム、アセチルコリンが歯周組織の治癒・再生に及ぼす影響を検索する予定である。
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