研究課題/領域番号 |
16K11837
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
鵜飼 孝 長崎大学, 病院(歯学系), 准教授 (20295091)
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研究分担者 |
原 宜興 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (60159100) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 咬合性外傷 / 骨吸収 / HMGB1 |
研究実績の概要 |
外傷性咬合による骨吸収破壊における骨細胞の関与に注目し、研究を行っている。まず、マウスを用いて外傷性咬合モデルを作製した。このモデルを用いて、骨吸収時の根分岐部の骨細胞の形態変化をみると、外傷付与早期に骨細胞が消失することが明らかとなった。これは、直接的あるいは間接的な骨細胞へのダメージが考えられる。そこで、細胞がダメージを受けた時に放出されるHMGB1(high mobility group box-1 protein)に注目した。 咬合性外傷モデルにおいて、外傷付与後HMGB1は歯鼓膜組織や骨細胞周囲で発現することが蛍光免疫染色法により明らかにした。また、HMGB1の作用を中和抗体の全身投与により抑制した時、外傷性咬合による骨吸収も抑制された。さらに、このモデルにおいて骨吸収に伴い骨吸収組織周囲において骨吸収誘導因子であるreceptor activator of NFkB ligand(RANKL)の発現が増加するが、このRANKLの発現は抗HMGB1抗体投与により減少するのを免疫染色により確認した。これらの結果はHMGB1が外傷性咬合付与時の骨吸収においてRANKL発現を増加させることで骨吸収を促進していることを示している。 以上の結果を日本歯科保存学会学術大会において発表を行い(鵜飼 孝、小山美香、山下恭徳、吉村篤利、マウス臼歯への外傷性咬合による骨吸収におけるHMGB1の関与、第149回日本歯科保存学会2018年度秋季学術大会、2018年11月1日)、英文雑誌に投稿のための原稿作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
咬合性外傷モデルにおいて、外傷付与後HMGB1は歯鼓膜組織や骨細胞周囲で発現することが蛍光免疫染色法により明らかにした。また、HMGB1の作用を中和抗体の全身投与により抑制した時、外傷性咬合による骨吸収も抑制された。さらに、このモデルにおいて骨吸収に伴い骨吸収組織周囲において骨吸収誘導因子であるreceptor activator of NFkB ligand(RANKL)の発現が増加するが、このRANKLの発現は抗HMGB1抗体投与により減少するのを免疫染色により確認した。これらの結果よりHMGB1が外傷性咬合付与時の骨吸収においてRANKL発現を増加させることで骨吸収を促進していることを示すことができた。 しかし、上記研究が一段落したところで、共同研究者が産休に入り、人手不足のため本来予定していたin vitro での破骨細胞形成へ骨細胞の関与に関する研究を行うことができていない。
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今後の研究の推進方策 |
得られている結果をまとめて、英文雑誌に投稿する。また、追加実験が必要となる場合があるので査読結果に従い、今後の研究を進めていく予定である。 本来予定していた骨細胞のアポトーシスの破骨細胞形成への影響を組織学的並びにin vitroの系を用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中にはJournal of Periodontal Researchに投稿、アクセプトを考えていた。しかし、共同研究者の産休もあり、一時期研究を中断せざるを得なくなり、予定通り研究が進まなかった。 今後、査読結果によっては追加実験が必要となる。また、外傷性咬合時に認められた破骨細胞の消失が、アポトーシスによるものか、ネクローシスによるものかを組織学的に検討すること、ならびにin vitroにおける破骨細胞形成における骨細胞の関与を検討していく予定である。具体的には、これまでに作製した組織標本においてTunnel染色、Caspase の免疫染色を行い、骨細胞のアポトーシスの有無を確認する。また、骨髄マクロファージからの破骨細胞の形成系に、正常あるいは低酸素刺激でアポトーシスを誘導させた骨細胞株MLO-Y4細胞の培養上清を添加して破骨細胞形成状態を検討する。これにより、骨細胞のアポトーシスの破骨細胞形成への関与を検討する。
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