研究実績の概要 |
歯周炎の疾病概念が,細菌感染から生活習慣病,そして多因子性疾患へと変遷する中で,細菌-宿主間の相互作用に及ぼす環境因子の影響についての検討は不足している。この点に関する知見を得るために,平成29年度は,細菌と宿主間の相互作用についても検討するため,代表的な歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisとTreponema denticolaの付着に関係するHgp44の付着領域の解析を行った。 P. gingivalis ATCC 33277 のHgp44 (アミノ酸配列1-419) を含む プラスミドベクターを テンプレートとし, PCR 法にて増幅後, self ligationしたものをE.coli BL21Star (DE3) に形質転換し,培養した。菌液のsonication, 遠心分離の後, 沈殿を可溶化し,リコンビナントタンパク質を精製した。これらについて, SDS-PAGEおよび抗His-tag抗体を使用した Immunoblottingで発現を確認した。その後, r-Hgp441-6, r-Hgp44のT. denticola ATCC 35405への付着は ELISAにて評価した。その後, Coaggregation assayにて, r-Hgp44フラグメントがP. gingivalisとT. denticolaの共凝集に及ぼす影響を評価した。 SDS-PAGE の結果, r-Hgp44 の各フラグメントは,目的の分子量であることを確認し, Immunoblottingで, 単一のバンドとして認めた。ELISA では, r-Hgp44, r-Hgp443, r-Hgp444と T. denticola の付着はコントロールに比べて有意に高い値を示した。さらに, r-Hgp446 とT. denticola の付着はコントロールに比較して有意に高かった。Coaggregation assayの結果, r-Hgp446 と r-Hgp44は低濃度で P. gingivalisとT. denticola の共凝集を阻害した。走査型電子顕微鏡,共焦点レーザー顕微鏡による解析の結果, r-Hgp446 はバイオフィルム形成を阻害した。 以上の結果より, Hgp44においてT. denticolaとの付着に関わる主たるドメインは, アミノ酸配列の199-316 間に存在することが明らかになった。
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