研究課題/領域番号 |
16K11846
|
研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
成瀬 桂子 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (30387576)
|
研究分担者 |
中村 信久 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (50619773)
三谷 章雄 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (50329611)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 歯周治療学 / 代謝学 |
研究実績の概要 |
インクレチンの1つであるGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)の膵外作用の1つとして、歯周病に注目し歯周病に対するGIPの影響を検討する。本研究課題では、GIP受容体ノックアウトマウス(GIPRKO)を用いて、実験的歯周炎を惹起し、GIPの歯周炎の発症・進展に果たしている役割の解明をめざしている。 GIPRKOマウスおよび野生型マウス(WT)に、実験的歯周炎を惹起する。実験的歯周炎惹起方法としては、上顎右側第二臼歯(M2)歯間部にリガチャーワイヤーを留置し、プラークを停滞させて惹起する。2週間後の歯槽骨吸収の状態について、microCT撮影を行った。 GIPRKOにおける実験的歯周炎は、ワイヤーの周囲の歯周組織で、炎症性細胞浸潤の増加を伴う重度の歯周炎を確認した。歯肉の炎症性サイトカインでは、WT歯周炎群と比較してGIPRKO歯周炎群で有意に増加した。これらの結果は、歯周炎におけるGIPの抗炎症作用を示唆する結果となった。 さらに、歯周炎の惹起は、歯槽骨吸収を増加させるが、GIPRKO歯周炎側では、WT歯周炎側と比較し、歯槽骨吸収が有意に増加していることが明らかとなった。その機序として、GIP受容体を持つ骨芽細胞の活性化を介してGIPが骨吸収を抑制していると考え、骨芽細胞におけるGIPの骨形成促進作用について検討した。ヒト骨芽細胞系細胞Saos-2細胞におけるGIPの骨形成作用について、alkaline phosphatase (ALP)、 osteocalcinなど骨形成関連遺伝子発現は、GIP濃度依存性に増加させた。こうした事実は、糖尿病における歯周病の発症・進展にGIP作用が影響している可能性を示唆するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯周病の発症・進展モデルとして、臼歯にワイヤーを留置しプラークを停滞させることにより実験的歯周炎を惹起出来ている。系として安定しており、GIPRKOマウスに対しても安定して実験的歯周炎が惹起でき、解析できていることより、おおむね順調に進展している。現在、骨系細胞におけるGIP作用経路の確認のために培養実験を実施しており、そちらも順調に経緯している。
|
今後の研究の推進方策 |
GIP受容体は、骨芽細胞や破骨細胞で発現しており、骨形成に重要な役割を果たしていると考えられる。本年度は、骨系細胞へのGIPの作用およびGIPRKOに実験的歯周炎惹起し、その歯槽骨形態について、骨密度、骨質などを含めWTと比較検討することにより、歯周炎の歯槽骨吸収におけるGIPの役割の解明をめざす。 ヒト骨芽細胞系細胞Saos-2細胞におけるGIPの骨形成促進作用について、その細胞内メカニズムを分子レベルで解明する。また、骨髄細胞からの破骨細胞誘導におけるGIPの効果については、TRAP染色、colony stimulating factor 1 receptor (CSF1R), receptor activator of NF-kappaB(RANK)など遺伝子発現解析を中心に検討する。 さらに得られた結果について、確認する目的で、WTマウスに実験的歯周炎を惹起した後、GIPを投与し、その効果を再検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた抗体の購入金額が変更となり、残金が生じた。 今年度は、消耗品費867,735円、旅費120,000円、その他80,000円で使用予定である。
|