研究課題
齧歯類の切歯根尖部には、生涯にわたって歯を形成する上皮系の細胞集団apical budがある。研究課題の申請時においてすでに我々は、野生型マウスのapical budを含む組織をGFP発現マウスのものに外科的に置き換える実験手法の開発に成功していた。川本法にて4μの非脱灰凍結切片を作製、蛍光・レーザー顕微鏡で検索した結果、移植後の組織は極めて正常像に近いことが確認された。さらに、この研究ではエナメル上皮由来のGFP陽性細胞の一部がセメント質中にセメント芽細胞として存在しているのを観察した。この実験モデルによって、エナメル上皮由来細胞がセメント芽細胞に分化する機構の解明が期待できると考えた。この研究成果はその後、PlosOne誌に掲載された。しかしこの時点での最大の課題は、apical budと同時に少量ではあるが間葉系の細胞も移植しているため、細部を検証できない点にあった。さらに、マウス切歯の発生において舌側のcervical loopが唇側のapical bud由来なのか、発生学的に独立しているのか未知であるため、この点が障害となった。これらの課題を解決するため、最終的には、GFP陽性マウスのapical bud のみを採取して、これを細胞単位に分散化し、注射針で野生型マウス臼歯の歯根膜腔に注入することを考案し、技術的に確立した。この研究手法により、歯根膜腔に注入したapical bud由来の細胞は、野生型マウスの歯根膜腔へ遊走し、さらにセメント質の中に取り込まれている像が蛍光顕微鏡下にて確認された。現在、免疫蛍光染色を行ってこの細胞が上皮間葉転換を生じてセメント芽細胞となっているのかどうかを検証している。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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