研究課題/領域番号 |
16K11854
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
時岡 早苗 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (50343265)
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研究分担者 |
古森 孝英 神戸大学, 医学研究科, 教授 (50251294)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯周病 / メタボリックシンドローム / 地域歯周疾患指数 / 疫学研究 / 職域歯科健診 |
研究実績の概要 |
平成22年から毎年職域成人歯科健診を実施している。その歯科健診の検査項目から歯周疾患の評価として地域歯周疾患指数(以下CPI)を用いた。CPIが0ならば歯周疾患なし、CPIが1あるいは2を進行した歯周疾患ありと分類し、歯科健診の継続受診者と非継続者の歯周疾患発症率の差を比較し、さらにメタボリックシンドローム(以下MS)の発症率と歯科健診の受診との関連について検討している。高血圧、糖尿病、高脂血症のいずれかを持つ者をMSと分類したところH29年度に歯科健診を受診した者817名のうちMSは高血圧58名、糖尿病18名、高脂血症63名の合計139名だった。今後平成31年度の歯科健診までデータを蓄積し歯周疾患の発症率とMSの発症率との関連性について検討する。さらに、歯科健診後のアンケート調査結果を用いて歯科健診受診による職員の歯科保健への意識改善と健診受診後の行動変容について検討し、歯周病とMSとの関連性を生体変化と意識の変化の両面から明らかにし、歯周疾患の改善によるMSの予防や発症リスクの軽減効果について評価を行う。さらにMSなどの生活習慣病の原因となる生活要因(共通リスク)が歯周疾患の発症に及ぼす影響を調べるために、健康的な生活をしている職員と高リスクの生活をしている職員を比較し歯周疾患の発症率を比較する。健康な生活習慣を、1)喫煙歴なしまたは禁煙済み(喫煙経験は5箱・年未満)、2)ドライマウスがない、3)歯みがき時間が3分以上である、4)歯間清掃を毎日行うとし、これら4項目全てに該当する人を低リスク群に、それ以外の人は全て高リスク群に分類し、主要評価項目は、低リスク群と高リスク群の、すべてのCPI(歯周病の評価指標)発症率とし、生活習慣の改善によって予防できた可能性のある歯周疾患がどれくらいあるか推定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度から平成29年度に職域成人歯科健診を毎年実施した。歯科健診受診者817名の歯科健診結果から歯周疾患の有無(CPIコード0が疾患なし、1と2が疾患あり)について抽出し、問診票からMSの有無を抽出した。さらに歯科健診後のアンケートから受診後の歯科保健に対する意識・行動変容データを得た。 平成30年度まで歯科健診を毎年継続実施した後データ整理を行い疫学的に検討するよう準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
残存歯数が少ないと肥満ならびに糖尿病が有意に多くなるため、歯を健康な状態に維持してできるだけ多く残すための生活習慣の変容は、生活習慣病、あるいはメタボの予防にも効果的な行動変容である。このメタボリックシンドロームの診断必須項目であるウエスト周囲長は基準に満たないが、高血圧や高血糖、高脂質、喫煙のリスクファクターを抱えている、いわゆる「隠れメタボ」にも、心血管疾患発症リスクが対照群よりも有意に高かったことが最近問題になっており、従来の特定健診、特定保健指導(メタボ健診・メタボ指導)の対象外である非肥満者においても、ハイリスクを伴う場合には、積極的に新しい介入が必要である。そこで、ハイリスクがある非肥満者への新しい介入手段が必要となる。 肥満、BMIに加えてリスクファクター(高血圧や高血糖、高脂質、喫煙の4因子)があると心血管疾患が起こりやすい。リスクの高い肥満者には特定保健指導で対処可能だが、リスクの高い非肥満者を対象とした生活習慣病予防に関する取り組はない。そこで、あらゆる年齢層において受診機会の多い歯科疾患に焦点をあてて、歯科健診と歯科保健指導を新しい取り組みとして導入した場合の有効性について検討する。歯科保健指導では、個別に、歯みがき方法に加えて、食生活是正指導も行っている。受診者自身が記載した問診に、全身既往歴に、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙にチェックがある場合、減塩食の勧め、早食いしない方法、間食回数を減らす、禁煙などの指導を行う。これらの生活習慣指導と歯科健診後に適切な歯の治療やメンテナンスを毎年受けた者と、歯科健診を1回だけ受けた非継続受診者において、リスクファクターとなる検査値に有意差があるか比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の職域歯科健診の必要経費が予定使用額に達しなかった。これは比較的高価で大きな備品はすでにそろっており、消耗品の発注が主な出費となったためである。本年度から、現行の視診による歯科健診に加えてドライマウス検査、歯周疾患等の検査を一部デジタル化する予定であり、必要な消耗品の使用額等が増えるため、前年度の予算を繰り越して使用する準備を進めている。
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