歯周病と生活習慣病はいずれも日本の職域成人が最も罹患しやすい疾患である。両疾患のリスク要因には共通項目が多く、その予防対策として歯科・医科連携による「共通リスクアプローチ」が有効である。歯周病は適切な歯みがきと定期的な歯科健診の受診で予防できるが、日本では海外の先進国のように定期的歯科健診を受ける習慣がなく、日本の健康対策の中で歯科分野が盲点になっている。本研究では歯科健診の継続が全身の健康に寄与する科学的根拠を明らかにする目的で、歯科健診の継続受診による歯周病ならびに生活習慣病の発症に及ぼす影響を評価した。過去10年間の職域歯科健診と定期健診結果から、歯科健診を毎年継続受診した職員と、最終年度に初受診した職員の歯周病と生活習慣病の発症率を比較した。(歯周病)継続受診者の健全な歯周組織を持つ割合は初受診者より1割以上高く、継続受診者の開始年度の歯周病有病率は初受診者と差がなかったことから受診継続により歯周病が改善した。歯周病は男性に多く、初受診者では性差の影響を受けやすいが、継続受診者ではその差は縮小しており、継続受診は歯周病の多い男性で効果を得やすいことが分かった。歯周病改善度を歯科健診の継続受診回数別に比較すると、3回以上で3割、5回以上で6割が改善していた。 (生活習慣病)血圧、脂質異常、糖代謝、メタボリックシンドローム判定のいずれの項目でも継続受診者のほうが健全である割合が高かった。なかでも血圧は歯科健診の継続受診と強い関連を示し、歯周病の有無は各疾患の有病者の割合と強い関連を示した。本研究の経年的分析結果から、定期的歯科健診の継続は多くの国民を悩ます歯周病と生活習慣病の予防対策をWin-Win効果で相乗的に推進できる健康増進法として期待できる。定期的な歯科健診を無理なく継続受診できるよう、今後特定健診・特定保健指導や事業所等の定期健診への導入が望まれる。
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