研究課題
本研究の目的は、ラット歯周病モデルを用いて歯周病の病態を反映し全身の健康に影響を与え得る血液中のmiRNAを特定することである。平成28年度では、8週齢Wister雄性ラット歯周病群(上顎第二臼歯への絹糸巻きつけによる歯周病惹起)と対照群に分けた(実験期間28日)。組織学的分析の結果、歯周病群では炎症性細胞浸潤および歯槽骨吸収を認めた。血液中のmiRNAをマイクロアレイによる網羅的解析を行ったところ、歯周病群は対照群より、3つのmiRNAにおいて2倍以上の発現を認め、22のmiRNAにおいて0.5倍以下の発現となった。平成29年度では、上記のmiRNAのうち、4のmiRNAに絞って逆転写PCR法を実施した。miR-376-3pの発現において、歯周病群が対照群より有意に高くなり、血液中のmiR-376b-3pが歯周病のバイオマーカーとなり得ることが確認された。肝臓病理組織像では歯周病群において僅かに肝細胞の変性および炎症性細胞の浸潤を認めた。平成30年度ではマイクロアレイにて肝臓のmRNAの発現の網羅的解析を行った後にペアリング解析を行い、血液中のmiR-376b-3pと肝臓miRNAと関連性を定性的に分析し、血液中のmiR-376b-3pは、炎症と関わる肝臓中のmRNA(insulin-like growth factor 1 receptor、homocysteine-inducible endoplasmic reticulum stress-inducible ubiquitin-like domain member 1、NME/NM23 nucleoside diphosphate kinase 1、slit guidance ligand 2、neuropilin 1)を標的とし歯周病が血液中のmiRNAを介して肝臓に影響を与える可能性が示唆された。