研究課題
食道癌手術は,侵襲が大きく術後合併症の頻度も高いため,チームの介入効果が大きく,歯科の果たす役割も大きい。本研究の全体構想は,食道癌患者において,術前補助化学療法中の口腔感染管理や術後の咬合咀嚼機能の確保が,手術後の予後に与える影響を検討することである。具体的な目的は,食道癌患者において,①術前補助化学療法中の口腔合併症と免疫栄養状態との関連,②術前補助化学療法中の口腔合併症と口腔細菌叢との関連,③咬合咀嚼機能と術後の体重変化の関連,を明らかにすることである。平成28年度は,術前補助化学療法中における免疫栄養状態と口腔内の状態を検討した。免疫栄養状態の指標には,prognosis Nutrition Index(PNI)を用い,後述の計算式で算出した({10×血清アルブミン値(g/dL)}+{0.005×総リンパ球数(mm3)})。口腔内の状態の評価は,DMF歯数,咬合状態(Eichner分類,Functional Tooth Units),歯垢付着状態(Plaque Control Records),舌苔付着範囲(舌苔スコア),歯周状態(歯周ポケット深さ,アタッチメントレベル,プロービング時出血)等とし、全身の状態は,癌の進行度,体重,Body Mass Index,血液の状態等を評価した。生活習慣の状態は,喫煙習慣,飲酒習慣等で評価した。それらに関連する因子について,統計解析ソフト(SPSSver.23,東京)を用いて,多変量解析を行った。その結果、PNIは咬合状態と関連することが示され、国内外の学会で発表を行った。
3: やや遅れている
①術前補助化学療法中の口腔合併症と免疫栄養状態との関連については、概ね順調に進み、研究成果をまとめて学会発表を行った。しかし、②術前補助化学療法中の口腔合併症と口腔細菌叢との関連,③咬合咀嚼機能と術後の体重変化の関連についての研究は、倫理委員会への書類提出が遅れている。また、研究遂行のために必要な実験室や冷凍庫などの物品の整備が遅れている。そのため、②と③の研究を開始できていない。
早急に実験室や物品の整備を行い、倫理委員会に申請し承認を得た上で、研究を進める。
実験室の環境整備に時間がかかり冷凍庫を購入できていない。また、パーソナルコンピューターを購入予定であったが、購入せずとも使用可能なパーソナルコンピューターがあったため購入していない。また、研究遂行のために必要な人員が見つからず、雇用できなかった。以上のことから、次年度使用額が生じた。
次年度は、冷凍庫の購入、研究遂行のために必要な人員を雇用をする予定である。
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Neurol Med Chir
巻: 56(9) ページ: 574-9
10.2176/nmc.oa.2016-0085