研究実績の概要 |
平成30年度は、主にヒト歯肉線維芽細胞を用いてキャッツクロー抽出物の抗炎症作用の評価を行った。抗炎症作用の評価方法は, (1)歯周病原性細菌のLPS刺激により誘導された炎症性サイトカインの産生抑制効果を試験した。キャッツクロー抽出物を前処理し, その後LPSを伴って培養を行い, 炎症性サイトカインのmRNA発現への影響をリアルタイムPCR法にて調べた。その結果, キャッツクロー抽出物で濃度依存的に炎症性サイトカインのmRNA発現を顕著に抑制することが示唆された。(2)当初の研究計画には含まれていないが, 炎症抑制の観点から傷ついた組織を修復する創傷治癒の重要性から, 創傷の修復に役割を果たす線維芽細胞において, in vitro系での培養細胞単層に一定の模擬的な創傷を作成し, そこに酸化ストレスを想定した過酸化水素存在下, キャッツクロー抽出物の添加による損傷領域の回復する様子を顕微鏡にて観察し創傷治癒効果を試験した。その結果, キャッツクロー抽出物の少量で損傷の回復が認められた。(1)(2)の結果からヒト歯肉線維芽細胞培養系においてキャッツクロー抽出物の抗炎症作用が示唆された。 期間全体ではキャッツクロー抽出物における歯周病への予防・治療への応用にむけての有効な作用を評価してきた。一つに歯周病原菌に対する抗菌作用の評価では, P. gingivalis、P. intermedia菌で生育抑制効果を認めた。そしてヒト歯肉線維芽細胞における抗酸化作用の評価では, 酸化ストレスを想定した過酸化水素添加での培養系で産生される活性酸素種がキャッツクロー抽出物の処理により抑制される傾向が認められた。研究期間において得られた結果からキャッツクロー抽出物における歯周病予防・治療への応用の有効性が示唆された。
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