研究課題/領域番号 |
16K11861
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
柴田 幸江 九州大学, 歯学研究院, 助教 (30274476)
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研究分担者 |
山下 喜久 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20192403)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 口腔連鎖球菌 / 唾液 / 分離同定 |
研究実績の概要 |
本年度は同意を得られた九州大学歯学部学生30名の口腔診査ならびに唾液採取を実施し、唾液細菌叢の解析を行った。唾液より染色体DNAを抽出し、それをテンプレートとして16S rRNA遺伝子のV1-V2領域をPCRで増幅し、増幅したアンプリコンの塩基配列を1サンプルあたり、平均10,000シーケンス数を 目処に次世代シーケンサーを用いてシーケンスを行った。これらの配列について97%の相同性に基づき類似の配列を群分けすることで、 生物学的には種レベルと同等の分類となる Operation Taxonomic Unit (OTU)を構築し、各OTUの代表配列をHuman Oral Microbiome Databaseのデータと最も近似する細菌種に割り振ることでそれぞれのOTUが該当する細菌種を推定して、学生被験者30名の唾液の細菌構成を決定した。その中に5種類の菌種名が確定していないStreptococcus属が存在し、平均構成比率はそれぞれ8.2%、2.8%、0.3%、0.03%、0.03%、個人の最高構成比率はそれぞれ18.1%、6.4%、1.5%、0.3%、0.2%であった。 次に、昨年度に引き続き、医局員の唾液細菌叢の解析結果に基づいて、菌種名が確定していないStreptococcus属の構成比率の高い2名の医局員から唾液を採取し、段階希釈を行って、Mitis-Salivarius寒天培地に塗布した。2日間、5%CO2存在下で培養後、さまざまな型のコロニーを20個ずつピックアップし,16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定したところ、両被験者より同種類の未確定Streptococcus属を1株ずつ釣菌することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は九州大学歯学部学生を対象にして、菌種名が確定していないStreptococcus属を唾液中から分離同定することであるが、今年度は口腔診査ならびに唾液採取を行うことができた被験者数は30名で、予定していた人数に達していない。加えて、学生からの釣菌にも至っていない。しかしながら、28年度に唾液細菌叢の解析を行った医局員2名から同種類の未確定Streptococcus属を1株ずつ釣菌することができた。
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今後の研究の推進方策 |
目的の細菌種(唾液に存在する菌種名が確定していないStreptococcus属)の釣菌を効果的に行うため、本研究内容について同意が得られた学生に対して口腔診査ならびに唾液採取を行い、当初予定していた被験者数80名(今年度30名実施)の唾液細菌叢の細菌構成を決定する。すでに釣菌に成功した1菌種以外の未確定Streptococcus属について、細菌種毎に構成比率が高い被験者5名程度を選別し、再び唾液を採取してStreptococcus属の選択培地であるMitis-Salivarius寒天培地に塗布する。コロニー形態に注目してさまざまなコロニーをピックアップして培養し、染色体DNAを抽出して16S rRNA断片を増殖し、塩基配列を決定する。1細菌種について最低5株を目処として分離する。 次に、今年度に分離した未確定Streptococcus属について、各々の性状(糖代謝、酵素活性など)を細菌同定キットアピのシリーズを用いて調べ、既知のStreptococcus属の性状と比較し、その違いを明らかにする。 加えて、学生80名の唾液細菌叢のコアとなる細菌種について、細菌種同士の存在のあり方、すなわち、ある細菌種の周囲に存在するのはどのような細菌種であるのか、さらに同時に存在する頻度はどの程度であるのかについて、ネットワーク解析を用いて明らかにする。本研究の対象者歯学部生80 名(平均年齢22歳程度)ならびに久山研究の被験者166 名(平均年齢53 歳程度)について、年齢を考慮して個々にネットワーク解析を行い、結果を比較検討する。さらに、ネットワークを形成する細菌種のさまざまな組み合わせの共培養時の凝集反応やバイオフィルム形成能を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は唾液採取が実施できた被験者数が30名で、当初予定していた80名に到達できなかったため、染色体DNA抽出や塩基配列決定などに要する費用が予定していた金額を下回り、助成金の次年度への持ち越しが生じた。 平成30年度は本研究の対象者をさらに増やして、唾液を採取し、染色体DNA抽出、PCR増幅、塩基配列決定などを行う。持ち越した助成金はこれらの作業に要する費用に当てる予定である。
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