血中脂質は高密度リポ蛋白質コレステロール(HDLコレステロール)のほか、中性脂肪、低密度リポ蛋白質コレステロールと関連していた。歯周病の程度を表す3つの指標である歯周ポケット深さ、クリニカルアタッチメントレベル、プロービング時の出血、歯周病細菌の感染に対する宿主の抵抗性を表す歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis(Pg)に対する血清抗体価、年齢、肥満度、中性脂肪、血圧および喫煙習慣等の背景因子を解析したところ、HDLコレステロールは、Pg抗体価、年齢、肥満度、中性脂肪、血圧および喫煙習慣が男性において有意な関連を示した。 次に単球やマクロファージ等の細胞を使用しない無細胞系のHDL機能測定の系を用いて、Pg由来リポ多糖(PgLPS)のHDLにコレステロールが取り込まれる反応をどの程度阻害するかについて解析を行った。PgLPSはリポプロテイン除去(LPS-PG Ultrapure)および非除去(LPS-PG Standard)の2種類を用いた。コレステロール取り込み反応は、磁性粒子上へのHDLの捕捉、コレステロールの酵素標識化、シグナル検出のスキームで実施した。LPS-PG UltrapureおよびLPS-PG Standardは対照の未処理群と比較してコレステロールの低下がみられた。しかしながら、LPS-PG UltrapureおよびLPS-PG Standardは同程度コレステロール取り込みがみられたことからPG由来のリポプロテインの影響は少ないと考えられる。ヒト血管内皮細胞(HUVEC)に対する抗炎症能に与える影響を調べるために、HDLにLPS-PGを加えてHUVECの細胞接着因子VCAM-1の発現量を測定したが、VCAM-1の発現量の抑制はほとんど認められなかった。
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