研究課題
本研究は、日常的に摂取する安全性の高い植物由来ポリフェノールが歯周炎および全身疾患予防に有用であるかについて評価することを目的として行われている。当該年度(平成30年度)は、松樹皮由来ポリフェノールを用いて、日常的に松樹皮由来ポリフェノールを接種することによる歯周炎改善効果の機序について以下の点に重点を置いて検討を進めた。①口腔バイオフィルム形成抑制効果の測定および機序の検討、②歯周病原細菌により惹起される口臭成分(揮発性硫化物:VSCs)産生抑制性および機序の検討。その結果、①松樹皮抽出物の日常的な摂取により、歯垢蓄積量の減少が認められた。また、歯周病原細菌および齲蝕原生細菌のバイオフィルム形成に対する有意な抑制効果が認められ、特に、齲蝕原生細菌であるStreptococcus mutans によるバイオフィルム形成に対し、殺菌効果のみならず付着・蓄積抑制作用を示すことが明らかとなった。さらに②歯周炎の特徴的な口臭の主要な成分であるVSCsを産生する細菌に対する抗菌活性を検討したところ、1000 μg/ml 濃度で有意な生菌数の減少が認められた。特に、VSCsのうち、硫化水素とメチルメルカプタンの両方を産生するP. gingivalis およびF. nucleatum によるVSCs産生量は、松樹皮抽出物の添加により濃度依存的に減少していた。さらに、P. gingivalis のメチルメルカプタン産生に関与する遺伝子(mgl)発現は、生菌数に影響を与えない濃度の松樹皮抽出物処理により有意に減少しており、本抽出物が歯周病原細菌の遺伝子発現を調節することで歯周炎改善効果を示す可能性が示された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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