研究課題
加齢に伴い要介護に移行するフレイルへの対応が重要とされている。本研究では全身疾患と関連していると報告されている歯周病が口腔機能低下とともにフレイル発症にも影響しているかどうかを明らかにすることを目的として行った。昨年度の研究結果では侵襲性歯周病菌である三菌種の総和であるRed complexと舌圧・オーラルディアドコキネシスとの関係は明らかとはならなかったが歯周病菌が口腔機能に何らかの影響を与えていくことが判明した。本年度は対象症例を増加することでフレイルと口腔機能の関係、Red complexの関係について再度検討をおこなった。60歳以上の一般住民を対象とフレイルの有無を評価し、口腔内診査は歯数,歯周病の有無、舌圧、オーラルディアドコキネシス(ODK)を調査した。そこでRed complexが口腔機能を表す舌圧とODKへの影響を検討した。舌圧とODKはすべてにおいて健常群と比較してフレイル群のほうが有意に低値を示した。舌圧とODKに関連する因子を重回帰分析したところ、舌圧のみがRed complex比と有意に関連していたが、ODKには有意差はなかった。フレイルに関連する危険因子をロジスティック解析したところ現在歯数、舌圧、年齢、BMIに有意な関連性を認めた(p<0.05)。フレイルと口腔機能低下およびRed complexに有意傾向を認め、特に現在歯数、年齢、誤嚥が強く相関していた。以上の結果からフレイルの発現には、口腔機能として現在歯数、舌圧が関連し、舌圧にはRed complexが相関していた。口腔機能の低下はフレイル発現の前駆症状であり、口腔機能の維持がフレイル予防の可能性が示唆された。また、Red complexの減少が舌圧低下を防止し、口腔機能低下につながるものと考えられた。
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体力栄養免疫学会雑誌
巻: 28 ページ: 64-67
巻: 28 ページ: 68-71