研究課題
1.歯科心身症の診断基準の見直し本症の病態の中核は脳機能の障害にあることは論を俟たない。しかし、疾患の不均一性から各種脳画像検査を闇雲に施行しても特異的な所見が得られる可能性は高くはない。そこで脳画像研究に先だって、当科で8年余にわたり蓄積された約4500例の本症患者の診療データを基 に、従来の器質的疾患の除外と症候学のみに依拠した診断体系に、年齢や既往歴などのより客観化しやすく、かつ予後予測に有用な因子を丹念に探索し、臨床的診断基準の再構築を試みた。事前の予想通り精神疾患の既往や高齢は予後不良因子になる可能性が高いことが示唆されたが、口腔内環境の変化、内分泌系や循環器系のマーカーとの関連も検討し、より確度を高めて学会や論文報告に繋げる予定である。なお本年度は、難治性の舌痛症に対する新しい治療法(TCAとDPAの増強療法)に関する症例報告が2本、口腔セネストパチーの新しい薬物療法と脳機能画像の変化をまとめた症例報告が1本海外雑誌に掲載された。これらを元により治療選択に結びつく診断基準の構築を目指している。2.歯科心身症と精神疾患との併存に関する検討“歯科で対応すべき患者群”と“精神科と連携すべき患者群”とを鑑別できる診断基準の策定を目指した。特に非定型歯痛の多数例検討においては、半数弱に何らかの精神科的疾患の既往が認められた。通常のうつ病や双極性障害のスクリーニングテストでは閾値以下と判定されることが多いことが示唆されたが、さらにサブカテゴリーを詳細に検討して診断に資する指標や予後予測に活用できる特定の項目を抽出できればと考えている。当科での治療経験の集積を続ける一方で、臨床データの整理・解析処理を適宜行い、学会発表や論文投稿を行った。
2: おおむね順調に進展している
従来の心理検査的なデータのみならず循環器系や内分泌系の生物学的マーカーの蓄積も開始するなど臨床データの蓄積および解析も順調で、一方で新しい治療法に関する症例報告が海外雑誌に数本掲載された。大学院生の指導もあり若干、進行に手間取ったが、次年度には非定型歯痛と精神疾患とのcomorbidity(共存・併存)に関する論文と咬合異常感のSPECTによる脳機能画像研究をまとまった形で原著論文として投稿できる予定である。以上より、概ね順調に進展していると判断した。
当科の豊富な症例数とバラエティに富む症例の蓄積から歯科心身症患者の臨床的データベースが順調に構築されてきた。やはり単一の指標では診断や治療効果の判定が困難であるのは事実だが、特定の薬剤の治療反応性に唾液分泌量の変化が関与している可能性も示唆され、今後の発展が期待される。長期予後のデータも順調に蓄積され、短期的な症状改善だけでなく数年後の患者の生活の質も見据えた、より信頼性の高い臨床データを発信していくことを目指して、現行のプロジェクトを推進していきたい。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 8件、 招待講演 4件) 図書 (3件) 備考 (1件)
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