研究実績の概要 |
【目的】高齢者において唾液量の減少が多く報告されている。唾液量の減少はう蝕(むし歯)や歯周病が発症・進行しやすい環境となるだけではなく、口腔乾燥といった不快感の原因となり、QOLを低下させる。そこで、本調査では地域在住高齢者を対象として唾液量減少の原因とその寄与の大きさをコホート研究にて検討することを目的としている。 【対象と方法】対象は男性172名、女性172名の計344名である。ベースラインおよび1年後に調査を行った。測定項目は唾液採取(刺激時唾液(SSF):ガム咀嚼法3分、安静時唾液(NSF):ワッテ法30秒)、血液検査、質問紙(生活習慣等)である。SSF、NSFとも1年後に25%以上の減少があった者を唾液減少者と定義した。 【結果および考察】ベースライン時におけるSSF(3分値)およびNSF(30秒値)の中央値(25%, 75%4分位)は男性で5.0 (2.9, 6.4)、0.13 (0.05, 0.26)、女性で3.30(2.00, 5.05)、0.10(0.05, 0.19)であった。刺激時唾液減少者は男性で35名、女性で43名であった。女性においてベースラインの血清アルブミン値が低値であったものの75%、HbA1cが6.5%以上であったものの67%が1年後に唾液刺激時唾液が減少しており、統計的に有意であった。男性では統計的有意に減少のある項目は認められなかった。一方で、安静時唾液減少者は男性104名、女性94名であった。減少に関連して有意な項目は認められなかった。女性における1年後の刺激唾液減少に対するオッズ比はアルブミン低値が10.5、HbA1c6.5%以上が7.0であった。以上より、高齢女性においてアルブミン値の低下とHbA1cが6.5%以上であることは、1年後の刺激唾液減少のリスクになることが示唆された。
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