研究課題/領域番号 |
16K11885
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡邊 賢礼 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20611180)
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研究分担者 |
井上 誠 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00303131)
真柄 仁 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (90452060)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 摂食嚥下機能 / 経頭蓋磁気刺激 / Black pepper oil / 運動誘発電位 / Swallowing Response Time |
研究実績の概要 |
平成28年度は抹消複合刺激のための予備実験として末梢単一刺激効果による嚥下機能変調を確認した.単一刺激としてはこれまで高齢者において血中サブスタンスPの増加および嚥下反射惹起時間の短縮を認め嚥下機能改善の報告のあるBlack pepper oil; BPOを用いた.BPOを鼻翼より3cm離して設置,1分間の鼻呼吸により嗅覚刺激を行い嚥下機能変調効果を測定した. 健常成人被験者7名に対し実施し,経頭蓋磁気刺激(TMS; Transcranial Magnetic Stimulation)を用いた大脳皮質一次運動野(咽頭筋支配領域)誘発性の運動誘発電位(MEP)および咽頭部に0.1mL/secの速度で蒸留水を注入し嚥下反射惹起までの潜時(SRT: Swallowing Response Time)を測定した.測定は嗅覚刺激前(baseline)および刺激直後から15分ごとに30分後までとした. 優位半球誘発性MEPはbaselineと比較すると刺激直後に最大のMEP増加(+52%)を示し30分後においても+37%の増加率を維持した.非優位半球誘発性MEPにおいても刺激直後に最大のMEP増加(+40%)を示したものの15分後にはbaseline付近までMEP振幅が戻る傾向にあった. SRTについてはbaselineでは平均7.2秒であったが嗅覚刺激30分後には平均5.9秒秒と短縮する傾向にあった. 以上よりTMSを用いたMEP測定からBPOによる嗅覚刺激は大脳皮質一次運動野への変調効果をもたらすことが予想され,本研究の主旨である抹消複合刺激の条件刺激の一つに成り得る.このことは咽頭電気刺激等との組み合わせによるさらなる嚥下機能変調効果が期待され,新たな摂食嚥下リハビリテーション戦略の一助になる予備データを取得できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主旨である抹消複合刺激による嚥下機能変調効果を測定するための予備実験を行なっている段階であるが,SRT測定のための注入孔および電気刺激・筋電図測定可能な電極を備えたカテーテルの適切な設計に時間を要したため,予備実験の中でも嗅覚刺激のみのデータ取得となってしまい,味覚刺激によるデータの取得を実施できていない.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画からは若干の遅れが見られるものの,SRT測定用および電気刺激・筋電図取得を同時に行うためのカテーテルが適切に設計され実際のデータ取得が可能となったことから,今後は味覚刺激データの取得も問題なく行えるものと考える. 次年度は嗅覚刺激データ数を増やすこと,味覚刺激として甘味および酸味刺激を同様のプロトコールで行うことを計画している.前年度の研究成果と合わせて学会発表・論文投稿を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
測定用カテーテルの設計確定が遅延したことにより,当初の使用本数を下回ったため購入本数が予想した本数よりも少なくなったため. また複合刺激を行なってからの謝金支払いとなるため現状での謝金の支出がないため.
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次年度使用額の使用計画 |
カテーテルは10~20回程度の使用により不具合が生じる場合が多いため,新たにカテーテルを追加発注する予定である.また条件刺激に用いる味溶液の購入も予定している,
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