本研究では、「地域歯科医療教育」で網羅すべきコンピテンシーを明示し、教育内容の体系化を図るとともに、地域医療に貢献しうる効果的な教育手法を構築する。さらにそれらを研究代表者の所属施設において2015年度より全国歯学部に先駆けて運用を開始している「アウトカム基盤型教育」カリキュラムにおいて、順次実践、検証を開始することにより、効果の高い教育手法を確立させることを目的とした。 全国歯学部の教育担当者より得られた「地域歯科医療教育」に関する教育内容や実施状況の情報を分析した結果、在宅歯科医療、介護医療、口腔衛生管理等の内容が重視され、それぞれの施設が持つ各種資源や背景を効果的に活用しながら、特色ある取り組みが行われていることが明らかとなった。その上で、地域歯科医療を実践する上で求められる能力について、研究代表者所属施設の臨床教授である離島在住の歯科医師に対して半構造化インタビューを行い質的に分析したところ、地域歯科医療においては「自分自身の専門的な能力」が役立っており、「自分の能力の限界」を把握すること、また大学教育への期待としては「コミュニケーション能力(国語力を含む)」の向上が挙げられた。 以上の成果をもとに、研究代表者所属施設では種々の検討を重ねながら、6年間の学部教育の学習成果(アウトカム)の一つとして「地域医療とヘルスプロモーション」を掲げ、関連する4つのコンピテンシ―を設置することとした。加えて低学年時から高学年にかけて一貫したポリシーを貫く科目群を配置し運用を開始している。また、一貫した評価基準で学生の成長を確認する必要があることから、本学独自の新たなeラーニング兼評価システムとして本学医学部と共同でeポートフォリオシステムを開発している。本システムは2019年4月より運用を開始し、今後も随時改修を行う予定である。
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