研究課題/領域番号 |
16K11896
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
後藤田 宏也 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (20307870)
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研究分担者 |
大沢 聖子 日本大学, 松戸歯学部, 助手 (00152108)
伊藤 孝訓 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (50176343)
Bhawal Ujjal 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (50433339)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 臨床能力評価 / 行動変容 / 卒前・卒後歯学教育 / 説明・指導系スキル / 系統的歯学教育 / アウトカム基盤型教育(コンピテンシー基盤教育) |
研究実績の概要 |
現在、ケア重視の歯科医療にパラダイムシフトが求められている。健康の維持・増進には患者が自ら健康問題をマネージメントできる行動変容を促す効果的な説明・指導スキルの評価と教育が必要である。また卒前・卒後歯学教育の順次的・系統的なアウトカム基盤型教育(コンピテンシー基盤教育)を目指した説明・指導系臨床能力評価の基準づくりおよび標準化はまだ確立していない。本研究は我が国と欧米の歯科医学教育機関の卒前と卒後歯学教育での全領域の臨床能力評価やOSCEの実態調査・解析を行い、卒前と卒後教育の各段階でのアウトカム基盤型教育による系統的説明・指導系スキルの評価の開発と患者の行動変容を促す効果に関する検討を目的とする。最新の卒前と卒後歯学教育における全領域の臨床能力評価の実態調査と関連論文の解析をもとに本研究を進め、系統的な説明・指導系スキルの評価の開発と共用試験OSCE実施後での全国共通の客観的臨床能力評価(OSCE)の基準づくりと標準化の提案を行うことに大きな特色がある。説明・指導系スキルに関しては、患者の行動変容を促す系統的な評価と歯学教育についての検討はなく、順序性を考慮した具体的な評価法の構築と教育効果を明らかにする点は独創的である。 初年度においては我が国と欧米の卒前・卒後歯学教育における全領域の臨床能力評価の実態調査と関連論文の収集および分析を試みた。我が国の大学での卒前・卒後歯学教育における全領域の臨床能力評価の現状・実態、その連続性および順次性の有無について検討し、同様に欧米の臨床能力評価の調査と関連論文の収集を行なった。またパイロット研究(事前研究)として既に分析済みの卒前と卒後臨床研修能力到達度確認試験に関するデータを整理し、論文にてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卒前と卒後歯学教育における全領域の臨床能力評価の実態調査と研究発表論文等の収集および説明・指導系スキルに関わる評価項目の抽出と系統的整理を行った。具体的には我が国の歯科医学教育機関の卒前と卒後の臨床能力評価と試験に関する情報および全領域の臨床能力評価に関わる内容の研究発表論文の収集を行なった。加えて欧米諸国、特にヨーロッパ歯科医学教育学会、米国歯科医学教育学会における投稿論文の検索を行い海外の特色ある歯学教育機関にて実態調査と情報を収集した。現在、臨床能力評価の現状を整理・分析中である。 また今までの収集したデータの整理と分析を行い、歯学教育に関わる評価および臨床能力評価に関する内容を複数の論文にまとめた。具体的には卒前臨床実習よび卒後臨床研修の教育に関して、それぞれ時期での断面的な研究が報告されている。しかし卒前臨床実習終了時および卒後臨床研修終了時で総括評価としての臨床能力評価の検討および卒前・卒後歯学教育の連続性をふまえた検討は皆無である。現在、世界医学教育連盟が提言している医学教育分野別評価基準による欧米および日本で進められている高等教育の質保証という国際的な潮流を踏まえた臨床能力評価の確立と基準づくりが強く求められている。本学では卒後臨床研修修了認定の評価として、形成評価と研修終了直前時に臨床研修能力到達度確認試験を総括評価として実施している。また5年次生を対象として臨床能力到達試験(OSCAT〉を実施しており、4年次実施のOSCE以降の臨床能力の習熟度と到達度の評価を行っている。本研究では臨床能力評価の確立を目的にパイロット研究(事前研究)として卒後臨床研修能力到達度確認試験の検討と卒前のOSCAT との比較・検討を論文として報告した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度より継続で我が国および欧米における臨床能力評価に関わる調査の分析を行い、その結果に基づきさらに次のような研究項目を推進する計画である。 1説明・指導系スキルと患者の行動変容の促進に関わる評価項目の抽出、系統的解析:収集したデータの分析により卒前と卒後歯学教育の説明・指導系スキルと患者の行動変容に関わる評価項目の抽出、系統的(段階的、順次性)整理および解析を行う。 2行動変容を促す説明・指導系スキルと評価システムの構築および効果の検証:学部学生および研修歯科医を対象として、患者がアドヒアランス(自らの意思での参加)行動および健康問題をマネージメントできる説明・指導系スキルを開発・教授し、効果の検証を行う。気づき・動機付け、問題発見・解決、行動評価およびチーム医療を主な検討カテゴリーとし、卒前、卒後歯学教育の各段階での系統的なコンピテンスを設定する。1)動機づけとなるコミュニケーションスキルの効果的な手順と面接法の基礎にある心理的背景との関わりを明らかにする。外面的なスキルと内的な動機の関連性について、説明・指導のプロセスとコンテンツの内容を整理し、順次性に則り評価システムを構築する。2)医療心理学を包括しながらロールプレイなどにより説明・指導系スキルの修得を行う。また実際の患者行動や心理を学ぶために、多くの臨床場面(歯科医院、病院歯科、訪問診療、介護施設等)に参加することで意識レベルの学修を実施する。教育効果を学修前後のOSCEやWBA(Work-based assessment)で比較、解析する。 これらを基に形成評価と総括評価の組合せた評価の開発および統一臨床能力評価の基準づくりと標準化に関する案を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は卒前と卒後歯学教育における全領域の臨床能力評価の実態調査と研究発表論文等の収集および説明・指導系スキルに関わる評価項目の抽出と系統的整理および解析を行うことが主な計画であった。具体的には我が国の歯科医学教育機関の卒前と卒後の臨床能力評価と試験に関する情報収集を実施し、全領域の臨床能力評価に関わる内容の研究発表論文の収集及び分析を行う。また欧米における臨床能力評価に関わる調査と研究発表論文の収集及び分析である。 以上の収集したデータの整理と分析に調査補助・資料整理を1名を対象として人件費に約5万円を予定していたが、本年度は分担者のみでデータの整理と処理することができたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は前年度から継続している臨床能力評価に関わるデータの収集及び分析を引き継き行い、全領域の臨床能力評価から説明・指導系スキルおよび患者の行動変容に関わる評価項目の抽出、系統的整理および解析を行うことを主な計画としている。 よって来年度は未整理データの処理と次年度の新たな調査と資料整理が生じるために、データ整理のための人件費および消耗品に充てる予定している。
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