研究課題/領域番号 |
16K11897
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
篠崎 貴弘 日本大学, 歯学部, 講師 (50339230)
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研究分担者 |
雫石 崇 日本大学, 医学部, 助手 (30570741)
今村 佳樹 日本大学, 歯学部, 教授 (90176503)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | functional MRI / 疼痛 / 慢性痛 / 脳機能画像 / BMS |
研究実績の概要 |
バーニングマウス症候群は、口腔に原因不明の持続性の疼痛を自覚する疾患である。近年、神経障害性の病因論が提唱されている。そこで、我々は脳の機能性変化をより明らかに反映する器質的変化が存在しないか、BMS患者の脳灰白質体積の変化について、研究を行った。 研究成果1)では、右側手掌と右側下口唇に加えた侵害熱刺激の前半部分と後半部分の脳活動を比較することで時間的加重について検討した。加えて脳皮質の体積をBMS患者と対照で比較した。統計処理はSPM8を用い脳体積の変化についてはVBM8により計測した。その結果、右側下口唇に侵害熱刺激を与えた場合の脳活動は,健常者に比較しBMS患者で著明に亢進した。口唇ならびに手掌に侵害熱刺激を加えた場合,BMS患者,健常者のいずれにおいても後半で脳活動の亢進が明らかだった。特にBMS患者の口唇刺激時の脳活動ならびに時間的加重の発現には,脳前方の運動系と認知情動系に関わる部位の亢進が深く関与し,これらの部位では皮質の萎縮もみられた。以上からBMS患者の疼痛には,運動系と認知情動系が重要な役割を果たしていると推測された。研究成果2)では、右側下口唇と手掌に侵害刺激と非侵害刺激を与え、MRIで脳活動を記録した。その結果、運動野、前視覚野、背側前頭野、島皮質、前背側帯状回に賦活が見られた。一方健常群口唇では運動野、体性感覚野、島皮質、視床に賦活が見られた。BMS群手掌では、体性感覚野、運動野、視床、前頭眼野、前頭皮質に賦活がみられ、口唇では体性感覚野、前運動野、視床、前帯状回に賦活が見られた。BMS群と健常群の比較では、BMS群で手掌では前運動野、前視覚野、前帯状皮質、海馬、島に賦活が見られた。口唇では前運動野、体性感覚野、前帯状回、前視覚野、尾状核、被殻に賦活が見られた。一方健常群では手掌、口唇ともBMS群より賦活が亢進した部位はほとんど見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被験者を募り、日本大学板橋病院放射線科にてバーニングマウス症候群患者14名、健常者18名の撮像を行った。これら被験者の撮像データはMATLAB2017aにて、voxel-based morphometry解析およびresting stat fMRIによる疼痛関連領域間神経結合について解析中である。さらに、脳領域間のレスティングステイトfMRIにおける協調した活動のレベルを計測することによって機能的結合の研究が可能なことから、特定領域と局所ネットワークの機能的結合についてや脳ネットワークにおける機能的連絡の全体的な構成について計測している。これは、CONN(A Functional Connectivity Toolbox for Correlated and Anticorrelated Brain Networks)を用い、安静状態と刺激を加えた状態を比較検討することにより、脳の疼痛ネットワークを探索中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、被験者を募り脳機能画像を撮像し、さらなる解析精度を上げていく予定である。 現在、日本大学板橋病院放射線科で撮像しているが、研究者の本拠地から地理的に遠隔地にあるため被験者および研究者の移動が必要であり、また撮像装置の使用状況に難点があった。そこで今年度は、撮像装置を現況の日本大学板橋病院に加え東京大学医学部附属病院放射線科および日本大学病院放射線科でも撮像できるようにした。追加した2病院は研究者の本拠地から比較的近いので、撮像機会を増やすことが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度研究において、温熱刺激装置によるMRI撮像において、MRI撮像装置内でのノイズが発生することが判明した。そのため、撮像に一部支障をきたした。MRI内でのノイズ減少対策を機器制作業者に依頼した関係上、一部MRI撮像を延期した。以上から、撮像に関わる制御機器の購入および撮像謝金の使用が滞り、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度繰越金は29年度の助成金と合わせて、温熱刺激装置のノイズ対策を行った関係上、一部制御用パソコンの更新が必要となり、今年度新規に購入予定である。また、今年度は撮像データの精度を向上させるため、被験者を当初計画より増員させる予定である。そのため、被験者の謝金に助成金を使用する。 研究成果発表において、第24回世界心身医学会(北京)、第30回口腔顔面痛学会(横浜)、第27回日本口腔診断学会(札幌)を予定し、旅費として使用する。
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