研究課題/領域番号 |
16K11903
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
谷口 裕重 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (80529636)
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研究分担者 |
松尾 浩一郎 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (90507675)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 嚥下反射 / 食道刺激 / 摂食嚥下障害 |
研究実績の概要 |
本研究はヒトを対象とした実験により食道内の末梢入力が,嚥下運動誘発や嚥下中枢の神経活動に与える影響を具体的な目標とし,生理学的に検討することを目的としていた。初年度は目的を達成するため,実験のセットアップと記録開始まで行った。2年目である平成29年度は,より効率よく食道刺激によって嚥下反射を誘発するため,異なった生理学的手法を用いて記録計測を行った。 セットアップには生体記録として高解像度マノメトリーを搭載したカテーテルを使用し,反対の鼻腔より食道内注入用カテーテルを挿入した。初年度は食道への機械刺激の違いとして,食道の刺激部位,刺激する液体の量および速度を変えたが,本年度は液体の温度(1℃,25℃,35℃)および,被検者の体幹角度(90度, 60度, 30度)を変化させた。注入からUES弛緩開始までの時間を潜時として算出し,施行間で比較したところ,我々が立てた仮説通り,1℃では全例で嚥下反射が誘発された。潜時は液体温度,体幹角度により異なっており, 35℃,25℃,1℃の順に短縮し(p<0.01),1℃では90度と比較して60度, 30度の潜時が短縮した 本研究より,60度, 30度のいずれかで,1℃の冷水を上部食道に注入した際に,嚥下反射が最も誘発されやすいことが示唆された。初年度の結果と併せると,最も効率よく食道刺激によって嚥下反射を誘発する条件(食道刺激部位,刺激する液体の量,速度,温度,被検者の体幹角度)が示された。 本年度の結果を基として,論文を執筆し投稿中である。次年度は論文執筆を進めるとともに,実験系を健常高齢者に適用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は平成28年度から引き続き,実験のセットアップ,記録計測を行った。研究開始当初は,実験系を健常高齢者および咽頭期嚥下障害を有する患者に適用する予定であったが,より効率よく食道刺激によって嚥下反射を誘発する生理学的手法を追求した。具体的には,食道刺激する液体の温度および,被検者の体幹角度を変えてより嚥下反射を誘発しやすい最適な条件を検索した。 昨年度に得られたデータは,“Development of an esophageal stimulation method to elicit the human swallowing reflex”との題名で論文執筆し,Journal of Oral Rehabilitationに掲載された。さらに,本年度のデータも既に論文執筆しており,Archives of Physical Medicine and Rehabilitationに投稿中である。 また,さらに解析を加え,日本老年歯科医学会第29回大会,第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会,8th European Society for Swallowing Disorders Congress and World Dysphagia Summit にて学会発表し,論文発表もする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は日本老年歯科医学会第29回大会,第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会,8th European Society for Swallowing Disorders Congress and World Dysphagia Summit にて学会発表する予定である。 また,より効率よく食道刺激によって嚥下反射を誘発する条件を検索するため,食道刺激する溶液を変えて既に実験を進めている。具体的には,溶液を生理食塩水,塩酸,カプサイシン,クエン酸,炭酸の各溶液を使用している。同時に実験系を健常高齢者に適用する予定である。この実験により,高齢者や嚥下障害を有する患者でも,食道刺激によって容易に嚥下反射を誘発することが期待できる。 平成30年度に得られたデータは,前年度までと同様に国際誌への論文投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金は本年度末の物品費,論文別刷代として使用を予定していたが,納品に時間を要したため次年度支払いとした。また,論文投稿は次年度以降に行うこととした。
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