研究課題
経管栄養管理されている者の嚥下頻度は、健常者と比較して有意に低下し、唾液誤嚥などのリスクが高まるとされている。そこで、日常的な随意嚥下の回数を増やす訓練は、唾液誤嚥のリスクを低減させる効果があると仮説を立てた。先行研究では,若年・高齢健常者を対象とし,中咽頭後壁をさまざまなパラメータの方形パルスで刺激したときの嚥下動態を解析した。刺激を感知する刺激強度を知覚閾値(Pe-Th),飲み込みたくなったときの刺激強度を嚥下閾値(DSw-Th),痛みを感知したときの刺激強度を痛覚閾値(Pa-Th)と定義し,性差,年齢の影響を受けるか解析した。その結果,若年健常者のPe-Th,DSw-Th,Pa-Thはいずれも男女間で有意差はなく,嚥下誘発条件は性差の影響を受けないことが示された。次に加齢の影響を検討したところ,高齢健常者は,若年者と比較してDSw-Thが有意に高くなったことから,加齢により嚥下を誘発しうる閾値が高くなることが示された。一方,有病高齢者の嚥下誘発に関わる咽頭領域の有効刺激条件の解析は,摂食嚥下障害に対する訓練法としての基礎的データとなる。急性期病院に入院している患者を対象に,咽頭刺激を実施した場合,Pe-Th,DSw-Th,Pa-Thはいずれも検知困難であり,刺激条件の再考を要した。そこで咽頭への微小電気刺激とともに,嚥下リハビリテーションとして確立しているアイスマッサージを取り入れた。この手法は、先端を冷やした綿棒で軟口蓋,前口蓋弓などを刺激し嚥下を促す方法である。被験者は、それぞれ異なる日に,通法および咽頭刺激+通法を施行された。嚥下誘発までの時間、一回の刺激で促される嚥下回数を計測し、比較したところ,咽頭刺激を持続した方が嚥下誘発までの時間が短縮し、嚥下回数が多くなった。咽頭電気刺激は、これまで確立されている嚥下リハに付加的な効果を及ぼす可能性が示された。
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