研究実績の概要 |
認知症高齢者700名を対象として解析し、①アルツハイマー型認知症(以下、AD)高齢者の骨格筋量低下には認知症の重症度に加えて嚥下機能低下も関連することが示唆された。②認知症重度化により四肢筋肉量、除脂肪量指数、下腿周囲径、基礎代謝量、MNA-SF、CNAQ(食欲)といった栄養指標が悪化する傾向が認められた。③ADの進行に伴いガーグリングや口腔清掃行為,リンシングの障害が発現するステージに違いがあることを明らかにした。また、嚥下障害が出現するFAST7から基礎代謝量が低下することを明らかにした。④AD患者、MCI者ともうつ傾向及び食事の中断の有無が食欲低下に関連していた。また、ADでは、教育年数、栄養状態、抗認知症薬の服用の有無、向精神薬の服用の有無も食欲低下に有意に関連していた。コホートデータ(約3400名)の整理を行い、1年間の追跡期間で嚥下機能が低下したAD高齢者において、予知因子として口腔ケア介助拒否の有無が有意に関連(オッズ比9.72)しており、嚥下機能低下と認知症の症状の一つである周辺症状の出現との関連が示唆された(平成28・29年度)。 特別養護老人ホーム入所者387名のうち、2年間の観察期間中死亡した者は129名であった。死亡群は生存群と比べて、認知症高齢者の摂食力評価の点数が有意に低かった。Cox比例回帰分析の結果から、認知症高齢者の摂食力評価は有意に2年後の死亡率と関連していた(HR:0.941, 95% CI:0.898-0.985, p=0.010)。CNAQや摂食力評価を用いて定期的に評価することは、緩和ケアにおける食事介助の場面におけるケアの質の向上に有用であることが示唆された(平成30年度)。
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