研究課題/領域番号 |
16K11908
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
渡邊 裕 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 専門副部長 (30297361)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症 / 軽度認知障害 / ミラーニューロンシステム / 食行動関連障害 / 孤食 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、次の2つの研究によって認知症に伴う食行動関連障害を改善する方法を確立することである。 (1)認知症患者の孤食と食行動関連障害の状況、それらに影響する要因を経時的に調査し、孤食と食行動関連障害、認知症の状態などとの関係を明らかにする。 (2)認知症患者の食行動関連障害が孤食の制限と、嚥下運動に関するミラーニューロンシステムを賦活する映像プログラムにより改善することを明らかにするとともに、患者、家族への影響についても検討する。また各種脳機能計測を行い、ミラーニューロンシステムに関する脳神経活動の機能的変化を明らかにする。 平成29年度は、これまでに収集した国立長寿医療研究センターもの忘れ外来受診中の5,209名のデータを集計し分析を行った。軽度認知障害者とアルツハイマー型認知症患者の孤食と食行動関連障害、認知症の状態に関連する因子について横断的に比較検討した結果、食欲低下群はうつ傾向及び食事の中断の有無と有意な関連が見られた。またアルツハイマー型認知症患者ではこれらに加えADL、併存疾患数、抗認知症薬の服用の有無、向精神薬の服用の有無が有意に関連していることを明らかにした。また、愛知県O市の地域在住高齢者5000名を対象に行った包括健診の横断データを分析し、軽度認知障害者の判別に口腔機能の評価が有用であることを明らかにした。 また、東京都I区の地域在住高齢者3000名を対象に行った包括健診において認知機能検査を実施し、MMSE23点以上26点以下の高齢者で、定期的歯科受診をしていない60人を募集し、前期介入群30名と後期介入群30名に分けて、ミラーニューロンシステムを賦活する映像プログラム等による無作為化比較対照試験(臨床研究登録UMIN000032205)を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度も前年度に引き続き、国立長寿医療研究センターもの忘れ外来受診中の患者のデータを収集し分析を行った(平成29年9月現在5,209名のデータを収集した)。分析の結果、軽度認知障害者385名とアルツハイマー型認知症患者853名の孤食と食行動関連障害、認知症の状態に関連する因子について横断的に比較検討し論文を作成しGeriatr Gerontol Int.に受理された。また、レビー小体型認知症患者183名の孤食と食行動関連障害、認知症の状態などとの関連を分析し、軽度認知障害者、アルツハイマー型認知症患者との違いを検討するとともに、追跡調査を実施できた615名を対象に、認知機能低下と孤食と食行動関連障害の関連について縦断的な検討を行っている。 また、愛知県O市の地域在住高齢者5104名を対象に行った包括健診の横断データを分析し、健常者2669名と軽度認知障害者930名の判別に口腔機能の評価が有用であることを明らかにし論文を作成しGeriatr Gerontol Int.に受理された。また、東京都I区の地域在住高齢者3000名を対象に行った包括健診において認知機能検査を実施し、MMSE23点以上26点以下の高齢者で、定期的歯科受診をしていない60人を募集し、前期介入群30名と後期介入群30名に分けて、ミラーニューロンシステムを賦活する映像プログラム等による無作為化比較対照試験(UMIN000032205)を開始した。 本研究は開始2年であるが、すでに2本の英文論文が受理されており、国立長寿医療研究センターもの忘れ外来における横断ならびに縦断調査も順調にデータを蓄積できている。また、東京都健康長寿医療センターにおいてもミラーニューロンシステムを賦活する映像プログラム等による介入プログラムを開発し、無作為化比較対照試験にて検証しており、研究計画は概ね順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降も、もの忘れ外来における縦断データの収集を継続し、国立長寿医療センターおよび東京都健康長寿医療センターで軽度認知障害者を対象とした介入研究を行っていく予定としている。倫理審査ならびに、臨床研究登録も終了し、介入試験も開始し順調に進行できている。実際にミラーニューロンシステムを賦活する映像プログラム等の介入を受けている対象者の評価も良好であり、効果が期待される。口腔機能を賦活するための映像プログラムおよび、孤食の機会を減少させるための、地域での講演会も2回実施し、今後も行っていく予定としている。脳機能計測については、臨床での使用頻度が高く、依然として機器の使用予約枠が十分確保できていないが、今後も関係部署に働きかけていく。介入試験の参加者が十分確保できない可能性があったが、対象範囲を拡大し予定通り60名を確保できた。若干介入スケジュールの遅延はあるが、すでに介入試験を開始しており、研究期間内に終わるスケジュールとなっている。 研究成果についてもすでに3本の英文論文と4本の日本語論文が受理されており、また関連論文3本を投稿済で、それ以外に2本作成中であることから、順調に成果を公表していけると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
雇用予定者の継続雇用ができなかったことから、雇用分の業務は業者委託(英文翻訳、校正)などに振り替えたが、337,376円の残金が生じた。 次年度繰り越しの残金については、研究成果(論文等)が予想より多くなる可能性があることから、これらを公表するための投稿費用、業者委託等(英文翻訳、校正)に使用する予定である。
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