研究実績の概要 |
本研究の目的は認知症に伴う食行動関連障害の予防、改善に資する知見を得ることである。そこで、本年度はもの忘れ外来受診中の5,361名の縦断データを分析し、軽度認知障害者とアルツハイマー型認知症患者で食欲低下とうつ傾向、食事の中断の有無に有意な関連があることを明らかにした。またアルツハイマー型認知症患者では、ADL、併存疾患数、抗認知症薬の服用の有無、向精神薬の服用の有無も有意に関連していることを明らかにした(Suma 2018)。次に地域在住高齢者それぞれ5,104名、7,614名を対象に行った包括健診の横断データを分析し、軽度認知障害と摂食嚥下機能障害との関連を明らかにした(Watanabe 2018, Kugimiya 2019)。地域在住高齢者3,155名を対象に行った包括健診において認知機能とアルツハイマー型認知症に関連するバイオマーカーの検査を実施した。そのうち認知症の疑いのある150名に対してMRI検査等を行いミラーニューロンシステムに関連する変化と白質病変について検討を行った。さらに軽度認知機能低下がみられる高齢者で、定期的歯科受診をしていない60人を募集し、ミラーニューロンシステムを賦活する口腔健康管理プログラムに関する8カ月間の無作為化比較対照試験(臨床研究登録UMIN000032205)を実施した。この他、5つの介護保険施設に入所中の重度認知症患者の2年間の観察調査を実施し、認知機能と食欲、自立摂食能力の低下、食行動関連障害が死亡発生と有意に関連していることを明らかにした(Mikami 2018, Sakamoto 2019)。以上の結果から認知機能の低下と摂食嚥下機能の低下は関連しており、摂食嚥下機能の維持向上は食行動関連障害とQOLを改善し、死亡発生のリスクを低下させる可能性が示唆された。
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