研究課題/領域番号 |
16K11909
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅野 恵美 東北大学, 医学系研究科, 講師 (10431595)
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研究分担者 |
川上 和義 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10253973)
館 正弘 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50312004)
丸山 良子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10275498)
丹野 寛大 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10755664)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 慢性創傷 / バイオフィルム / ダメージ関連分子パターン |
研究実績の概要 |
褥瘡や糖尿病性下腿潰瘍など慢性創傷では、細菌によるバイオフィルム形成が蔓延し、治癒が進行しない症例をしばしばみかける。近年、バイオフィルム誘導に「壊死組織・死細胞から放出されるダメージ関連分子パターン(DAMPs)」の関与が示唆されているが明らかではない。本年度は、DAMPsが創傷治癒過程に与える影響について解析を行った。DAMPsの認識には様々な受容体が関与するが、我々は多糖の認識に関与するC型レクチン受容体(CLRs)のうち、本年度はDectin-2に注目した。 野生型(WT)マウス(C57BL/6)とDectin-2 遺伝子欠損(KO)マウスの背部皮膚に全層欠損創を作成した。両群間の創閉鎖率、創部の組織学的所見、real time RT-PCR法によるmRNA発現、白血球分画について解析した。さらに、α-マンナンによるDectin-2刺激が創傷治癒に与える影響について、WTマウスの創部にα-マンナンを投与して解析を行った。また、IL-17A欠損マウス、抗Gr-1抗体投与により好中球を除去したWTマウス、好中球エラスターゼ阻害薬を投与したWTマウスにそれぞれα-マンナンを投与して、創閉鎖率への影響を解析した。 その結果、WTマウスでは創作成12時間をピークにDectin-2 mRNA発現の増加及び創部に集積する細胞にDectin-2陽性所見を認めた。WTマウスに比べDectin-2 KOマウスでは、創閉鎖率が高く、再上皮化率の増加を認めた。また、Dectin-2 KOマウスでは創部へのマクロファージの集積が増加していた。α-マンナンを投与したWTマウスでは、創閉鎖率が有意に低下し、創部への好中球の集積が増加していた。また、NETosisの増加及び好中球エラスターゼ活性の増加を認めた。α-マンナン投与による創閉鎖率への影響は、IL-17A欠損、好中球除去及び好中球エラスターゼ阻害薬の腹腔内投与により改善した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
創傷治癒過程における壊死組織・死細胞から放出されるダメージ関連分子パターン(DAMPs)の関与について、本年度はCLRsの一つであるDectin-2の関与を示すことができた。 今後、他のCLRsであるDectin-1との関連やToll様受容体とのクロストークなどの解析が必要であるが、順調な進捗状況であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
創傷治癒過程において、Dectin-2が治癒阻害に働いている可能性が明らかになったことから、今後は創部におけるどのようなDAMPsがDectin-2を介して治癒を阻害するのか、またDectin-1やToll様受容体とのクロストークについて詳細な機序解析を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画を綿密に練り、効率よく解析を行ったため、実験動物購入費が予定よりも抑えられた。この費用は次年度の解析において計画的に使用する予定である。
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