研究課題
褥瘡や糖尿病性下腿潰瘍など慢性創傷では、細菌によるバイオフィルム形成が蔓延し、治癒が進行しない症例をしばしばみかける。近年、バイオフィルム誘導に「壊死組織・死細胞から放出されるダメージ関連分子パターン(DAMPs)」の関与が示唆されているが、詳細は明らかではない。本研究では、創部においてどのようなDAMPsやその受容体が発現するのかについて解析を行った。近年我々は、DAMPsやPAMPsの認識に関わる受容体のうち、C型レクチン受容体に注目し、創傷治癒との関連性について解析を行っている。今回、C型レクチン受容体のうちデクチン(Dectin)-2は、創部全体から抽出したmRNAについてreal-time PCRを用いた解析より、皮膚損傷後12時間をピークとして発現が高まり、その後緩やかに低下することを確認した。次にDectin-2発現細胞について解析したところ、創部に集積してきた好中球の約40%、マクロファージの約32%に発現しており、リンパ球には殆ど発現していないことをフローサイトメトリーを用いて明らかにした。さらにプレリミナリーな結果ではあるが、Dectin-2に認識されるDAMPsが皮膚損傷後、Dectin-2陽性細胞周囲に存在していることを免疫組織化学的に確認した。以上の結果より、現在は慢性創傷を管理する際に外因性の細菌やPAMPsをターゲットとした治療法が主流となっているが、宿主由来の内因性のDAMPsが治癒遅延に多大なる影響を与えている可能性があり、今後詳細な解析が必要であると考える。
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