平成29年度については、遺伝性神経難病療養者のスピリチュアリティの捉え方、表現の仕方を明らかにするため、半構成的インタビュー調査のプレインタビューを脊髄小脳変性症患者家族会において実施し、具体的なニーズとケアの現状について確認し、包括的な示唆を得た。語られる内容は身体的苦痛あるいは介護における問題など具体的なものであり、スピリチュアルペインやスピリチュアルケアのニーズが意識化されているとはいえない状況が考えられた。それと同時にスピリチュアルケアが提供されているという自覚や認識も低いことがうかがわれた。 介護度が高い療養者の状況においては、日常的な看護ケアや介護動作が多い場合は特に療養者のスピリチュアルな苦悩の部分に注目して関わる時間的な余裕がないことが危惧された。急性期医療の場においては特に危惧されるところであるが、訪問看護の場における現状の把握がさらに必要であると考える。意思決定についての支援が認識され、医療記録にも項目として整備されており、医療従事者の意思決定支援は重要な項目として認識も高くなっている。意思決定支援についてはスピリチュアルケアと重なる部分もあると考えられるため、スピリチュアルケアに特化するシステムを検討するのではなく、意思決定支援も含めた包括的なシステムの構築が必要であることが示唆された。 困難感またプレインタビュー調査の内容を参考とし、スピリチュアリティおよびスピリチュアルケアの質問紙調査のための調査用紙について既存のものについて検討した。スピリチュアリティ評定尺度や患者家族用質問紙、医療従事者用評価質問紙についてはさらに信頼性・妥当性を検討することが必要であり、今後の検討課題となった。
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