研究課題/領域番号 |
16K11917
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
武田 利明 岩手県立大学, 看護学部, 教授 (40305248)
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研究分担者 |
平野 昭彦 岩手県立大学, 看護学部, 准教授 (30305255)
市川 尚 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (40305313)
三浦 奈都子 (小山奈都子) 岩手県立大学, 看護学部, 講師 (40347191)
浅野 哲 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (70568063)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗がん剤漏れ / 実証研究 / 看護ケア技術 |
研究実績の概要 |
1) 実験動物での研究;ラットの尾静脈に血管周囲炎を発症させるためにアレビアチン(強アルカリ製剤)を投与し、発赤の程度と腫脹の増加率、さらに病理組織学的検査を実施した。その結果、ヒトと同様の強い発赤が認められ、腫脹の程度は経日的に増強した。組織学的な検査では、血液のうっ帯像や血栓形成が認められた。これらの所見から、薬剤による血栓性静脈炎の病態像を実験的に作製することが出来た(日本看護技術学会誌;Vol.15,No.3,pp281-286,2017)。 2) 培養細胞での研究;タキサン系微小管機能阻害薬であるパクリタキセル製剤のタキソール(PTX)には、添加剤として刺激性の強いヒマシ油及びエタノールが含まれている。一方で、これらを含まないアルブミン懸濁型注射剤であるアブラキサン(ABR)が、近年臨床で用いられ始めている。急性期の皮膚の炎症反応に関与するサイトカインの誘導が、添加剤により影響を受けるか否かについて、ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY細胞)を用いて検討した。また、ヒト血管内皮細胞(HUV-EC-C細胞)を用いて、血管外漏出に関与すると考えられる血管内皮細胞への傷害における添加剤の影響について検討した。その結果、① 皮膚線維芽細胞に対しABRと比較してPTXの傷害性は高く、主に添加剤が細胞傷害を引き起こすと考えられた。② PTXと比較してABRは、皮膚線維芽細胞に対するLC50が約11倍高い濃度であることが示された。③ ABR及びVNR曝露では、IL-6放出が認められたが、PTXではIL-6放出は認められなかった。④ VNRと、PTX及びABRの主薬を含む薬液と添加剤のみの薬液は共に、血管内皮細胞の細胞生存率を低下させた(日本薬学会2017,03仙台市)。 3) 得られた研究成果の一部は、看護系雑誌『エキスパートナース2017,05特別付録』に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験動物を用いた研究では、ラットの尾静脈に実験的静脈炎を再現よく作製することが可能となった。この静脈炎は、血栓性静脈炎であることを組織学的な検索により明らかとなった。また、培養細胞を用いた研究では、抗がん剤の製剤添加物に血管内皮細胞を傷害する作用があることを明らかにした。このように、計画した研究内容を予定通り実施することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に確立した、一般の薬剤(アレビアチン)による血栓性静脈炎の病態モデルを更に改良し、抗がん剤による静脈炎モデルを確立する。培養細動を用いた研究では、抗がん剤による血管内皮細胞の傷害メカニズムを解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物で得られた病理標本の作製が一部ホルマリン固定が不十分で間に合わず、この予算を繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
充分にホルマリン固定されたラットの尾静脈を病理標本用に切り出し、業者に作製依頼を計画的に実施する予定である。
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