研究課題/領域番号 |
16K11917
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
武田 利明 岩手県立大学, 看護学部, 教授 (40305248)
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研究分担者 |
平野 昭彦 岩手県立大学, 看護学部, 教授 (30305255)
市川 尚 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (40305313)
三浦 奈都子 (小山奈都子) 岩手県立大学, 看護学部, 准教授 (40347191)
浅野 哲 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (70568063)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗がん剤 / マイトマイシンC / 特定行為 |
研究実績の概要 |
看護師が実施できる特定行為(38項目)に、抗がん剤などが漏れた場合の処置として『ステロイド薬の局所注射』が推奨されている。しかし、この処置の確かな根拠は得られていないことから、有効性を確認するための基礎研究を実施した。 目的;起壊死性抗がん剤であるマイトマイシンC(MMC)は血管外漏出により皮膚傷害を引き起こすことがある。この皮膚傷害に対して副腎皮質ホルモン剤を投与する際にチオ硫酸ナトリウム水和物(ST)を同時に投与すると、治癒時間が約半分に短縮されたことが報告されているが、実際に行われた症例はわずかである。一方、生体防御タンパク質であるメタロチオネイン(MT)は、MMCが引き起こす染色体異常誘発を抑制することが報告されている。そこで、MMCの皮膚傷害に対するSTの治療効果とMTを利用した予防法について検討した。 方法;①正常ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY細胞)にMMCの臨床用薬液と共に2% ST溶液およびヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(HDC)の臨床用薬液の1000倍希釈溶液を同時に24時間曝露して細胞生存率を測定した。②ヒト肝臓がん細胞(HepG2細胞)にZnSO₄ 100 μMを24時間添加した後除去し、MMCの臨床用薬液の2倍~100倍希釈溶液を24時間曝露して細胞生存率を測定した。 結果・考察;①MMC曝露によって顕著にあらわれる細胞生存率低下が、STの同時添加により抑制された。②MMC濃度に依存した細胞生存率の低下を認めたが、いずれのMMC濃度においても、ZnSO₄を添加した場合の細胞生存率は非添加の場合の細胞生存率より高い傾向を示した。また、MMC曝露時の細胞内MT濃度は、ZnSO₄の添加により約2.4倍に増加された。従って、STはMMCが引き起こす皮膚傷害に対して有効であり、HDCを併用することでその効果が増強されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験動物を用いた基礎研究の実験系以外に培養細胞を用いた実験系も確立することができ、in vivoとin vitroの両面から抗がん剤の点滴漏れに伴う皮膚傷害の病態を解明することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
すでに確立した実験動物を用いた実験系で抗がん剤が漏れた場合の生体に及ぼす影響を病理組織学的に解明するとともに、培養細胞を用いた実験系で病態の機序を解明し、より有効な看護ケア方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物を飼育している実験室の空調が一時的に使用できない状況となり、予定していた一部の実験を延期したため。この研究については、次年度に計画的に遂行する。
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