研究課題/領域番号 |
16K11918
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
三浦 奈都子 (小山奈都子) 岩手県立大学, 看護学部, 講師 (40347191)
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研究分担者 |
武田 利明 岩手県立大学, 看護学部, 教授 (40305248)
石田 陽子 山形大学, 医学部, 講師 (60322335)
及川 正広 東北福祉大学, 健康科学部, 講師 (60537009)
高橋 有里 岩手県立大学, 看護学部, 准教授 (80305268)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗がん剤 / 血管外漏出 / ステロイド局所注射 |
研究実績の概要 |
【目的】現在,日本では起壊死性抗がん剤の漏出時にステロイド溶液の局所注射が実施されている.一方,ステロイド局所注射は経過的に進展する深部組織の傷害を抑制する効果に乏しいこと,皮膚症状の悪化が生じるため禁忌とする報告もあり,その効果の詳細は明らかになっていない.起壊死性抗がん剤の血管外漏出に対するステロイド局所注射の効果を明らかにすることを本研究の目的とした. 【方法】ドキソルビシン,ビノレルビンを6週齢雄性ICRマウスの背側皮膚に投与した.抗がん剤漏出後何も処置を行わない群(対照群),漏出後ステロイド局所注射を3回投与する群(局注群),漏出後生理食塩液の局所注射を3回行う群(生食群)とした.漏出部の肉眼的観察と写真撮影,エコーおよびサーモグラフィの撮影を行った.浮腫および潰瘍について,肉眼的に4段階評価を行い,病変部位の面積を測定した.摘出した皮膚組織をヘマトキシリン・エオジン染色後,光学顕微鏡にて観察した. 【結果】どの群でも潰瘍形成がみられたことから,ステロイド局所注射および生理食塩液局所注射には潰瘍形成を抑制する働きがないことがわかった.また,3群とも痂皮形成,表皮の肥厚,出血,浅層深層ともに炎症性細胞がみられたことから,組織学的にも3群に差がないことが示唆された.抗がん剤による皮膚傷害は,炎症反応のみのとどまらず,潰瘍などがさらに重篤化し,ステロイド作用の範疇を超えてしまうこと,傷害が長期化し治癒までたどり着かないことや何度も注射針を穿刺することによる皮膚傷害の悪化が考えられた. また,対照群では病変部が局所的であり,ステロイド群と生食群は広範囲に病変が広がったことから,局所注射によって抗がん剤を拡散させることで病変部の拡大につながったと考えられる. 今後は,本研究の結果を臨床現場に周知することが必要と考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,抗がん剤の血管外漏出の肉眼的観察,エコー,サーモグラフィによる評価,組織学的観察を行った. 予定していたPCRによる評価については,次年度行うこととする. また,静脈炎の評価は次年度以降の課題とする.
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた所見は,看護系学会に発表することで臨床現場への周知を図ると共に,webサイトに掲載することでも周知する. PCRについては,炎症の定量化のための項目を再検討する必要がある. 静脈炎のモデルはウサギの耳介静脈を用いて作成予定である.この場合の静脈炎は薬液による傷害(化学的静脈炎)の再現を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
ウサギ購入費および分担者分担金の残額であった.情報共有を行い,適正使用に努める.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の静脈炎モデル用のウサギ購入と分担者へ依頼していた先行研究の文献を取り寄せるために使用する.
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