研究課題/領域番号 |
16K11920
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研究機関 | 岐阜県立看護大学 |
研究代表者 |
黒江 ゆり子 岐阜県立看護大学, 看護学部, 教授(移行) (40295712)
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研究分担者 |
寳田 穂 武庫川女子大学, 看護学部, 教授 (00321133)
藤澤 まこと 岐阜県立看護大学, 看護学部, 教授(移行) (70336634)
田中 結華 摂南大学, 看護学部, 教授 (80236645)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 言いづらさ / クロニックイルネス / ライフストーリー / エピソード / 人間/生活者 / 実践領域モデル修正案 / 看護実践 / 日本文化における言いづらさの特性 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、看護実践者である研究協力者が自らの看護実践において実践領域モデル案を活用した体験を、慢性の病いにおける他者への「言いづらさ」を基盤とした看護実践のあり方について検討する有識者会議にて共有し、討議を続けるとともに、日本の文化における他者への「言いづらさ」を日本文学から繙き、他者への言いづらさが生じる可能性のある先行要件を確認し、それぞれ発表した。 第一に、実践領域モデル案を実践活動において活用した研究協力者(看護実践者)を含む'有識者会議’を3回(7月、11月、2月)開催し、実践領域モデル案の活用について話し合い、実践領域モデル案への追記・修正を終了するとともに、看護実践における「言いづらさ」「聞きづらさ」とケアについて、研究協力者が体験したストーリーを集積した。集積したストーリーから言いづらさとケアについての'エピソード'を導き、これらの'エピソード'の内容を洞察し、慢性の病いにおける「言いづらさ」の事象と「言いづらさ」を包摂したケアのあり様を描き、「実践領域」の論述を深めた。 第二に、日本の文化における「言いづらさ」の特性を含めて検討する目的で、昨年度の慢性の病いとともに日本で生活を営む人々の体験記(糖尿病、神経難病、炎症性腸疾患、精神障害、HIV感染症等)からの知見を踏まえ、登場する人物が見えたとおりの風景が語られているとする近代小説、「言いづらさが解ける(ほどける)」と導き出されていた事象、および個々の状況においては‘自覚的生きようとする’ことが「言いづらさが超越される」という事象に繋がって現れることが思索され、論文にて公表した。 「クライアント領域」「ナース‐クライアント領域」「実践領域」を含む理論的構想の論述内容について、これらの領域を統合すべく検討を重ね、人間/生活者のとらえ方、人が人を支えるときの関係のあり方、及び看護実践のあり方の追究を続けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、慢性の病いにおける他者への「言いづらさ」を基盤としたケアに関して創成した実践領域モデル案を研究協力者(看護実践者)が自らの実践に活用し、その実践での体験をふまえ、看護実践における活用について有識者会議にて検討し、実践領域モデル案の重要性を確認し、これらの知見を学会において発表した。また、研究協力者が自らの実践活動において体験した慢性の病いにおける「言いづらさ」「聞きづらさ」及びケアに関する研究協力者のストーリーを集積し、得られたストーリーから「言いづらさ」「聞きづらさ」とケアについての'エピソード'を導き、その特性を考察した。さらに、日本の文化における「言いづらさ」の特性について、登場する人物が見えたとおりの風景が語られているとする近代小説から島崎藤村の「破戒」、田山花袋「蒲団」、徳田秋声「新世帯」、正宗白鳥「入江のほとり」、岩野泡鳴「耽溺」、および森鴎外「雁」を繙き、他者への言いづらさが生じる可能性のある先行要件として‘他者への気遣い’‘説明する言葉が見つからない’‘状況の理解が難しい’‘傷ついた体験’‘仕事への影響の懸念’‘社会的偏見との遭遇’がみられることを確認し、日本の文化における他者への「言いづらさ」のあり様について一層の考察を深め、その成果を論文にて公表した。 これらの内容を洞察し、「クライアント領域」「ナース‐クライアント領域」及び「実践領域」の統合を目指し、それぞれの事象の意味を捉え慢性の病いにおける「言いづらさ」と看護のあり方、及びその為の人材育成について意見交換を継続的に実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、平成30年度に引き続き、慢性の病いにおける他者への「言いづらさ」を基盤とした看護モデル案の活用に関する有識者会議を開催し、より活発な意見交換を通しモデル案の質を高めていくとともに、研究協力者の体験をふまえ、言いづらさとケアについての看護職者のストーリーを集積する。集積したストーリーから言いづらさとケアについての'エピソード'を導く。これらの'エピソード'の内容を洞察し、事象の意味を捉え慢性の病いにおける「言いづらさ」を包摂したケアのあり様を描き、「実践領域」の論述を深める。 慢性の病いにおける「言いづらさ」について、「クライアント領域」「ナース‐クライアント領域」「実践領域」を含む論述内容について、これらの領域を統合すべく検討を重ね、人間/生活者のとらえ方、人が人を支えるときの関係のあり方、及び看護実践のあり方の追究を継続して行う。 これらをふまえて「クライアント領域」「ナースークライアント領域」「実践領域」を含む理論的構想の論述内容を洗練させていく。さらに、日本文化における「言いづらさ」の特性について、文学書をさらに繙き、深い視野を持ってこれらの諸領域を統合するよう努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
有識者会議を開催時の旅費が予定より少ない額で3回実施されたため、次年度使用額が生じることになった。最終年度である本年、内容を海外発表を含め報告書等で広く公表するための費用の一部として使用する。
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