本年度の目的は、血液透析中の低強度運動が心臓自律神経活動動態および客観的睡眠指標に及ぼす影響について検討することであった。 研究参加の同意が得られた準夜帯の血液透析者6名(平均年齢52.2±5.4歳、透析歴1年半~30年4ヶ月)を対象とし、1週間のベースラインおよび2週間の介入期間を設定した。ベースラインは普段の生活を、介入期間では透析中にベッド上にてペダリング運動20分間、ダンベル・エクササイズボール・自重を用いたレジスタンス運動5種類を、初回約30分間から漸増させ最終回には50分間実施した。心臓自律神経活動動態の評価は、ベースライン期間中および介入期間終了後について透析開始1時間以降に対象者から心電図を誘導し、安静5分間について心拍変動リアルタイム解析プログラム(MemCalc/Bonaly Light)を用いて周波数成分を分析した。また、両期間中に小型活動量計(ライフコーダGS)を連続装着し、睡眠覚醒周期解析ソフト(Sleep-Sign-Act)にて客観的睡眠指標を得た。なお、本研究は神戸市看護大学倫理委員会の承認を得て実施した。 ベースラインと低強度運動介入期間後の心臓自律神経活動を比較したところ、超低周波成分、低周波成分および高周波成分、また安静時心拍数にも差は認められなかった。睡眠覚醒周期の周期性の強さの指標である分散ピーク値はベースライン(0.15±0.07)に比べ、介入期間(0.20±0.10)で有意に高値を示した(p<0.05)。また、睡眠効率においてベースライン(77.8±6.8%)に比べて介入期間(80.6±7.6%)で有意な改善が認められた(p=0.004)。 透析中の低強度運動実践による看護介入は、外来血液透析者の心臓自律神経活動動態に変化をもたらす運動量とは言えなかったが、睡眠覚醒周期および客観的睡眠指標の改善に貢献する可能性が示唆された。
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