研究課題/領域番号 |
16K11925
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研究機関 | 沖縄県立看護大学 |
研究代表者 |
金城 芳秀 沖縄県立看護大学, 保健看護学研究科, 教授 (40291140)
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研究分担者 |
西川 浩昭 静岡県立大学, 看護学部, 教授 (30208160)
佐伯 圭一郎 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (50215521)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | civility / incivility / questionnaire / social capital theory / caring theory |
研究実績の概要 |
インシビリティー(incivility)の概念、定義および範囲を明らかにし、次年度以降の調査のための文献検討を行った。先行研究は英語文献に限定されているため、PubMedから「incivility」と「nursing education」による59件の候補論文を検索し、具体的なincivilityが図表として記述されている文献12件を抽出した。これら図表を和訳し、incivilityを研究者間で共有・確認した。 加えて、本研究の尺度開発に重要な文献は、Kerberら(2012)のNICE-Q(Nurses’ Intervention for Civility Education Questionnaire(21項目))とTeczaら(2015)のNursing Student Perception of Civil and Uncivil Behaviors(13項目)であった。NICE-Qは講義、演習、臨地実習を想定し、Teczaらは臨床教育環境での学生が認識するcivilityやincivilityを取り扱っていた。ただし、Teczaらは看護学生から看護専門職へのtransitionを視野に入れており、病院現場の臨床教育環境の点検を目的に尺度開発されていた。 さらに、Clarkら(2008)によるcivilityの概念分析から、「不一致, 相違, または異論を表すとき,シビリティーは他者に対する心からの敬意として特徴づけられる.この誠実な対話には, 時間, 存在, 意欲が含まれ, 共通点を探る誠実な意図がある.」と定義されていることがわかった。その後、American Association of College of Nursingなどは、ソーシャルキャピタル理論からシビリティーを捉えることを推奨しているが、別方面ではケアリング理論を用いた尺度開発が行われていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Kerberら(2012)のNICE-QとTeczaら(2015)のNursing Student Perception of Civil and Uncivil Behaviorsの測定内容の理解を深めるために、看護系大学2校の教員(10~15名)を対象に情報交換会を2回実施した。その結果、インシビリティーが教育環境の弱体化につながるとは思うが、インシビリティーあるいはシビリティーの捉え方は学生も教員も多様ではないかという認識を共有した。 まず、大学院生4名を対象にグループインタビューを試行した。インタビューガイドでは、「インシビリティーとは, 学生が大切に扱われていない, 敬意が払われていないなど, 学生にとっては学習意欲が削がれた場面」とした。研究協力者2名(大学院生)にインタビュー役と録音データから逐語録の作成を依頼した。逐語録の作成の際には、個人情報を削除または匿名化もあわせて依頼した。したがって、研究者は参加者がマスキングされた資料を分析することになる。 同様の方法と手順にしたがい、看護系大学4年生5名を対象にグループインタビューを2回実施した。その結果、学生と教員の相互作用が密接になる臨地実習時や卒業論文の作成時にインシビリティーやシビリティーが認識されることがわかった。そこで、臨地実習に関わる教員4名を対象に、同様なグループインタビューを追加した。なお、院生指導と類似した状況が想定できることから、卒業論文の指導教員を対象としたインタビューは実施していない。次年度は、逐語録の質的帰納的分析を進め、さらに必要なインタビューを追加して、インシビリティー測定尺度案を作成する。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗を加速するために、李 廷秀(東京大学医学系研究科)を分担研究者として追加する。さらに、開発する測定尺度の構成概念の妥当性に関連して、看護教育・管理の専門家から専門的知識の提供を受ける。また国際的な視野でcivilityを捉えるために、ハワイ大学から研究者を招聘し、討議・意見交換を行う。今後の研究を推進方策として、国内外の多様な資源を活用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に新たに研究分担者1名の参加を得たいこと、専門知識の提供を受けたいので、国内外より研究者を招聘したいことなど、研究推進体制を強化するために研究費を残している。
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次年度使用額の使用計画 |
国内外から研究者を招聘し、討議・意見交換を行う計画である。
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