研究実績の概要 |
シビリティー(civility)の概念分析を扱った重要な論文は2つである。ClarkとCarnosso (2008)は、「不一致, 相違, または異論を表すとき,シビリティーは他者に対する心からの敬意として特徴づけられる.この敬意には, 時間, 存在, 真に話し合う意欲, そして共通点を探る誠実な意図が含まれる.」と操作的に定義している。そして、「個人はそれぞれのパーソナルレンズを通してシビリティーを認識する.そのレンズは文化, 経験, 立場および期待の影響を受けている.」と分析した。 一方、Woodworth(2016)は「シビリティーとは、積極的な行動と属性の複合である.これは, コミュニケーション, 対人関係, 学習, 患者アウトカムに影響を与える.」とした。その際、シビリティーの「属性」は道徳的原則(徳、信頼、尊厳・尊敬)と専門職性(ロールモデル、説明責任、コミュニケーション、共同)から構成されていると分析した。そして、看護教育者は、学習環境において社会的に受け入れられる行動的期待を設定し、学生との良好な対人関係を確立し、道徳的および学術的な完全性(integrity)を維持し、ロールモデルでありシビリティーである行動を示さなければならないと結論している。例えば、クラスルールは行動的期待の一つであり、これを学生と教員が積極的に維持すること、教員自らクラスルールに従った行動を示すこと、そのコンピテンシーが必要であることである。しかしこれまで国内の教育現場におけるシビリティーの実証研究はほとんどない。 本研究は、シビリティーの理解によるインシビリティー(incivility)の尺度開発を目指して、関連文献の批判的吟味、グループインタビューデータの分析、教員間の討議を行ってきた。その結果、シビリティーにはもちろんのこと、インシビリティーにもシビリティーで答え続ける教員と学習環境が重要と考えられた。
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