研究実績の概要 |
わが国の看護学生にとってシビリティ(civility)もインシビリティ(incivility)も馴染みのない概念である。今回、看護学部4年生5人を対象とした3つのフォーカス・グループから、国内では初めて、教育学習環境において学生が認識するシビリティとインシビリティを報告した。本研究から得られた示唆は、「学生は自らの成長を伴う教育学習環境の構造と過程から教員のシビリティを認識し、学生と教員の相互の関わりの中止あるいは中断の原因となる状況からインシビリティを認識するのではないか」であった(金城ら, 日本看護科学会誌 Vol.39, pp 165-173, 2019)。これらの認識は、学生の立場、経験、期待に基づく、学習者と教育者の相互関係から示された。ただし、先行研究による「インシビリティの連続性」という捉え方に従うと、非言語的内容と身体的暴力は示されなかったことになる。すなわち、インシビリティの認識に文化が影響していることを示唆する結果の一つと考える。 以上をふまえたパイロット版のインシビリティ測定尺度において、学生が認識する学生のインシビリティ(18項目)では、信頼性、内的整合性、ある程度の基準関連妥当性が得られた。加えて、学生が認識する教員のインシビリティ(24項目)は、一定の信頼性・妥当性を有し、実用に足るものであることが確認できた。現在、教員が認識する学生のシビリティ、インシビリティという側面から追加すべき項目がないか検討を進めている。わが国の教育学習環境におけるインシビリティ測定尺度の完成度を高めるために、さらに継続研究を行う予定である。
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