研究課題/領域番号 |
16K11926
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研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
及川 正広 東北福祉大学, 健康科学部, 講師 (60537009)
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研究分担者 |
武田 利明 岩手県立大学, 看護学部, 教授 (40305248)
三浦 奈都子 (小山奈都子) 岩手県立大学, 看護学部, 講師 (40347191)
小野木 弘志 東北福祉大学, 健康科学部, 講師 (50610200)
高橋 有里 岩手県立大学, 看護学部, 准教授 (80305268)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抗がん剤 / ダウノルビシン塩酸塩 / 罨法 / ステロイド / 血管外漏出 |
研究実績の概要 |
今年度は主に、ダウノルビシン塩酸塩における皮膚傷害ならびに、罨法効果とステロイド局所注射に関する作用の検討を行った。実験方法としては、実験動物(ラット)背部の皮膚組織2カ所に薬液を注入し漏出状態とした。罨法効果に関しては、温罨法群(漏出部位の皮膚表面温度を40~42℃に保ち30分罨法を行う)、冷罨法群(漏出部位の皮膚表面温度を18℃~21℃に保ち30分罨法を行う)、対照群の3群に分け、それぞれの傷害治癒過程について観察を行った。ステロイド局所皮下注射の作用に関しては、左右漏出部の内、1カ所に、ステロイドを周囲から中心に向け注入し(ステロイド群)、ステロイドを注入しない抗がん剤漏出部(非ストロイド群)との傷害治癒過程について比較検討を行った。観察は肉眼的観察を経日行い、観察最終日に漏出部組織を採取し標本を作製し、組織学的検討を行った。研究結果からは、ダウノルビシン塩酸塩は、組織内部での重篤な傷害が多く確認されたのだが、潰瘍など顕在化には至らなかった。このことから、ダウノルビシン塩酸塩は、肉眼的に観察されなくても、組織内部で傷害が生じる危険性がある薬剤と考えられた。臨床現場では、漏出後の皮膚傷害の評価は肉眼的観察が中心となるが、本研究結果から、今後、組織内部の観察に関するツールの検討も必要であると考えられた。罨法やステロイド局所注射に関しては、明らかに抗炎症効果を示す所見はえられなかった。以上の研究成果に関しては、看護系ならびに医学系学会学術集会で発表を行い、知見の共有を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験動物(ラット)を用いた実証的研究に関しては、実験結果を学会発表まで行うことができたので、一定の成果が達成できた。しかし、当初予定していた、がん化学療法室への実態調査が、計画段階で留まったしまった。計画の見直しを行いながら、次年度は実態調査を実施できるよう取り組んで行く。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、臨床看護師からの情報提供と文献検索を引き続き行っていく。さらに、本年度計画段階で留まった、がん化学療法室への実態調査(アンケート)を実施する。また、今年度使用した抗がん剤のダウノルビシン塩酸塩も含む、アントラサイクリン系悪性腫瘍剤の血管外漏出治療剤サビーンに対する、実証的検証を実施するための実験モデルの作成を行う。サビーンに関しては、臨床看護師からの問い合わせも多く、可能な限り早い段階で学術集会などを通して、結果を発表できるよう取り組んで行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、本年度は1種類の抗がん剤に対する検討となり、実験動物、抗がん剤、麻酔薬、組織標本作製の為の経費が必要最低限の予算で行ったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、抗がん剤皮膚傷害の実証的研究の他、がん化学療法室への実態調査、新たな動物実験モデルの開発なども計画的に行っていく。この為、本年度よりさらに研究内容が拡大するため、次年度の研究に活用することができる。
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