研究課題/領域番号 |
16K11931
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
浅野 きみ 金沢医科大学, 看護学部, 助教 (10735351)
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研究分担者 |
紺家 千津子 金沢医科大学, 看護学部, 教授 (20303282)
向井 加奈恵 金沢大学, 保健学系, 助教 (30755335)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リンパ浮腫 / メスマウス / リンパ流 / 下肢 |
研究実績の概要 |
1.マウスの鼠径リンパ節と周囲の脂肪を除去し、下肢にリンパ浮腫が発現するかを観察した。鼠径リンパ節の郭清によって、郭清後は郭清した側の下肢に浮腫が観察され、かつ、下肢からのリンパ流が遮断されたことをICG(インドシアニングリーン)で確認した。しかしながら、郭清3日後には浮腫は消失し、一部のマウスでリンパ流の再開が確認され、郭清10日後にはすべてのマウスでリンパ流の再開が確認された。 2.すべてのマウスにリンパ流が再開された理由として、切断したリンパ管が再生したためか、残存する真皮の毛細リンパ管にリンパが流れ、毛細リンパ管が切断されたリンパ管の残存部に交通しているルートに流れたのか、毛細リンパ管からリンパ管が再生し、残存するリンパ管に結合して新たなルートが形成されることによるのかはICGの観察からは明らかにならなかった。 3.次に、リンパ流が再開した部位の組織を切り出し、パラフィン組織切片を作製してリンパ管を観察したが、そこからはリンパ管の再生像を捉えることはできなかった。また、真皮の毛細リンパ管と皮下(筋膜上)の集合リンパ管との繋がりが見つけられないことが分かり、文献を検索するがそのような繋がりを明確に述べているものは無く、繋がりを示す切片像も観察されなかった。 4.そのため、マウスでの真皮の毛細リンパ管の分布とその毛細リンパ管と皮下を繋いでいる導出リンパ管の存在と分布を明らかにすることで上記のリンパ節郭清後にリンパ流が再開するメカニズムが解明されるのではないかと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リンパ節と周囲の脂肪の除去では、慢性リンパ浮腫を生じさせないことが明らかとなり、浮腫が消褪する理由はリンパ管の再生によるものなのか、または既存の毛細リンパ管との交通路がもともとあり、それを利用したのか、リンパ流の再開の理由を解明できなかった。リンパ節切除後のリンパの流れを解明するには、まず正常なマウスの皮膚の真皮の毛細リンパ管の分布や形態をとらえ、それが皮下のリンパ管とどのように交通路(導出リンパ管)を形成しているかを明らかにしないと解明できないという考えに至った。その過程に時間を要し、進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要と現在までの進捗状況で述べたように、我々が目指すリンパ浮腫発生機序から浮腫軽減や線維化を防止する効果的なケアの開発を行うには、まず真皮毛細リンパ管の分布や形態を解明して、毛細リンパ管が皮下にある集合リンパ管と繋がる交通路である導出リンパ管の分布や形態を明らかにする必要がある。そこからリンパ節を切除しても、その後にリンパ流が再開され、慢性リンパ浮腫を発症させないという理由が解明されるのでは無いかと考えている。 そのために、平成29年度は、1.皮膚をホールマウントで5'-nucleotidaseで染色し、毛細リンパ管、導出リンパ管、集合リンパ管を実体顕微鏡で観察する。リンパ管の分布を判明させる。2.この皮膚のパラフィン切片や樹脂切片を作製し、ミクロの構造を観察する。3.さらに、皮膚真皮に樹脂のメルコックスを注入して、毛細リンパ管-導出リンパ管-集合リンパ管の樹脂標本を作製し、より立体的に皮膚のリンパ管像を観察する。次に、平成30年度には、この正常な皮膚リンパ管像を元に、再度、リンパ浮腫発生の実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
リンパ節周囲の脂肪切除によるリンパ浮腫作製を試みていたが、慢性浮腫の状態を維持することが難しく、その後の組織観察用の試薬費用などが未購入である。また、研究がやや遅れており、成果の発表が遅れており、論文作成費用が未使用である。
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次年度使用額の使用計画 |
マウスの購入とその飼育に係る物品、5'-nucleotidaseの試薬、樹脂標本作成のための樹脂の購入が必要である。
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