研究課題
1.リンパ浮腫の発生場所からの浮腫軽減や線維化を防止する効果的なケアの開発のためにマウスの鼠径リンパ節と周囲の脂肪を除去し、下肢にリンパ浮腫が発現するかを観察したところ、リンパ節とリンパ管を切除した後に新たなリンパ流の経路が出現することが判明した。そのため、新たに出現したその経路は新生リンパ管であるのか、または既存の導出リンパ管(毛細リンパ管と集合リンパ管を結合する)が拡張したものなのかを明らかにすることを行なった。2.皮膚の切片を作成し、免疫化学染色によるLYVE-1、podoplanin、酵素反応による5'-nucleotidaseによってリンパの組織学的形態を明らかにすることを行なっているが、真皮から皮下組織までのリンパ管を描出することに時間を要しており、観察のための手法については現在も検討中である。3.1の新たなリンパ流の経路が、新生リンパ管か、導出リンパ管の拡張なのかに関しては、未だ完全な結論に至ってはいないが、正常な皮膚では導出リンパ管が観察されることはまれであるのに対し、リンパ節やリンパ管切除後に出現するリンパ管の部位の樹脂切片(電子顕微鏡用の標本作製)での観察から、拡張した導出リンパ管(皮筋より浅層の皮下脂肪の中に存在)が観察された。透過型電子顕微鏡の観察でもそれがリンパ管であることが確認された。4.現時点では、1での新たに観察されたリンパ流の経路を導出リンパ管として研究を進めている。
3: やや遅れている
切片でのリンパ管における既存の観察手法としてLYVE-1、podoplaninによる免疫組織化学染色があるが、表皮の一部分の反応にとどまり、真皮までの描出が十分ではなかった。導出リンパ管の観察には真皮までのリンパ管の描出が必要となる。そのため、新たに酵素反応による5'-nucleotidaseで検討中である。また、立体的な皮膚のリンパ管像の観察手法として、皮膚真皮に樹脂のメルコックスを注入し、毛細リンパ管-導出リンパ管-集合リンパ管の樹脂標本を作製を試みているが、手法が確立していない。
まず正常な皮膚の組織学的観察における染色方法の再検討を行い、観察を確立することで導出リンパ管の存在とメカニズムを証明する。正常な皮膚リンパ管網を明確に示したのち、リンパ管断端部が再開通するメカニズムの解明として、リンパ管新生によるものか、側副血行路に関するものかを新生した核を観察することで、そのどちらであるかを証明する。
(理由)リンパ管を組織学的に観察する際に、予定していた5'-nucleotidaseでのホールマウントと凍結切片での染色方法では、導出リンパ管の形態をとらえるのが困難であり、手法の確立に時間を要した。(使用計画)組織観察の手法確立のために、亜鉛固定液など新たな固定液の試薬を購入する。また、マウスの購入とその飼育にかかる物品、論文作成・投稿に使用する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Wounds
巻: 29 ページ: 1-9
形態・機能
巻: 15 ページ: 57-61
Health
巻: 09 ページ: 1660~1679
10.4236/health.2017.912122
http://nurse-adult.kanazawa-med.labos.ac/one/