研究課題
本研究では、虚血性心疾患の発症予防として、冠動脈危険因子を持つ成人に対し、リラクセーション法(漸進的筋弛緩法、以下PMR)を導入することにより、ストレス認知とタイプA行動パターンの行動変容が起こる可能性について検討した。6名の対象者にシングルケースデザイン法を用い、個人の行動特性に焦点をあて、7か月間継続的に介入を実施し、介入毎のリラクセーション反応とその間のストレス認知と行動変容の経過を分析した。被験者個別のリラクセーション反応の評価は、シングルケースデザイン法の視覚的判断を用い、ベースライン期と操作導入期、自己訓練期に得られたデータは、ランダマイゼーション検定を実施した。体験記録の記述や会話内容の回顧的記述の質的データは、ラザルスの心理学的ストレスモデルに沿って分析し、半構成的面接のデータは、質的帰納的に分析した。その結果、操作導入期には心拍変動解析によるLF/HF値はPMRの技法の影響を受けて上昇したが、収縮期血圧及び心理的ストレス反応測定尺度(以下SRS-18)は低下し、リラックス度は上昇した。ランダマイゼーション検定の結果は、収縮期血圧及びSRS-18の実施前後変化量は、ベースライン期より、操作導入期、操作導入期+自己訓練期で有意に低下し、リラックス度の実施前後変化量は、有意に上昇した。また、質的データの分析の結果、日常生活における不安やとらわれがリラクセーション法の効果を実感することで、身体的・精神的変化や考え方・行動の変化として認められ、A型行動パターンはB型へ傾倒した。以上により、心疾患予防につながる行動変容の可能性が示唆された。本研究の結果は、40th The American Holistic Nurses Association Annual Conference にて採択され、2020年6月に発表予定であったが、学会開催が次年度へ延期となった。
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