本研究の目的は,看護学生が看護学実習で活用できるような知識の構造化を目指した,演習と実習を繋ぐ授業の開発である。2018年(平成30年)度は,前年度の評価活動に基づき次の1)から7)を実施した。1)学生が実習において実施する看護技術の頻度と困難さ等の把握,これを踏まえ,2)授業目的・目標・方法・内容を検討し教材を作成する,3)授業を実施し,学生の思考状態を把握する,4)実習における知識・技術の活用状況を把握する,5)授業の改善点を明らかにし,改善案を作成する,6)2018年度に実施した授業内容を整理しテキストを作成する,7)授業内容の他分野への応用を検討する,の,7項目である。 1)実施する頻度の高い技術は,前年度と同様に,「バイタルサインの測定」と「清潔に関する援助」であった。。2),1)の結果を踏まえ,授業目的・目標・方法は変えず,今年度は,新たに,呼吸・循環系に関する演習を追加した。3)授業計画に沿って教授活動を実施した。ワークシートの記述より,バイタルサインの測定では,右半身麻痺の事例患者の特徴を捉えた測定部位の選択や体位の工夫などがみられており,清潔に関する援助では,体位や場所の工夫と援助時の観察事項も考えられていた。また,呼吸・循環系に関しては,呼吸困難という症状でも,障害された部位によって原因が異なることなどが記述されていた。4)知識・技術の活用状況は,4年次のすべての実習が終了した時点で調査を行い,「腋窩だけの体温測定にとどまらず状況に応じて測定部位を考えた」,「異常値が出た時にあわてず,環境を確認した」など,演習内容が活用されていた。5),1)~4)の状況を踏まえ,完成版として6)のテキストの作成に至った。7)今回の教授活動は,知識を伴って技術習得を目指す分野で活用できることが期待される。
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