本研究の目的は、日本文化に根ざした患者-看護師間の対人援助関係の構築・維持・促進に関する教育に資する看護教材の開発を行うことであった。書籍ならびに雑誌文献、学会・セミナーからの情報収集を行った結果、特に日本文化に根ざした対人援助関係の特徴を見出すためには、高齢者に焦点を当てることの意義が考えられた。さらに地方都市などその土地の文化が色濃く残る地域では、看護師は対象者本人だけでなく対象者の文化を含め尊重・理解してかかわりをもつことが対人援助関係に関して重要であることが示唆された。 当初インタビュー対象者をEPA等で来日している日本で働く外国人看護師と考えていたが、現地で看護師の資格をもつ外国人看護師は日本の高齢者施設で介護福祉士として従事するために来日している者も多く、対人援助関係の構築・維持・促進、特に高齢者との対人援助関係について研究するには日本で介護福祉士として働く外国人看護師も対象とすることが適切であった。一方で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により高齢者施設への出入りや接触は厳しく制限され、また、従事していた外国人看護師・介護福祉士も自国に戻るケースが多くみられたり等様々な制限によりインタビュー調査を行うことは困難であった。 データの不足を補うためにこれまでの研究で得た海外で働く日本人看護師を対象とした日本文化に特徴的な対人援助関係に関するデータの二次分析や他研究者の行ったEPAインドネシア看護師・介護福祉士のインタビューによる書籍・研究等も参考にして知見の統合を試みた。慢性疾患患者や高齢者は長期に渡って医療者との関係が続くことからその中に日本文化に根ざした対人援助関係がみられ、細やかなおもてなしのような接し方、献身的な気持ち、言外情報の読み取り、親身な寄り添い、羞恥心への配慮、察し、礼儀を重んじる、調和と協調性、近すぎない距離感等の鍵となる概念が示唆された。
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