研究課題/領域番号 |
16K11973
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
河野 由美 畿央大学, 健康科学部, 教授 (10320938)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | デス・エデュケーション / アドバンス・ケア・プランニング / 存在脅威管理理論 / 実験 / 死への態度 / 心拍変動 / 自己と大切な他者の死観 / 唾液アミラーゼ活性値 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は①デス・エデュケーション(以下,DEと称す)の実施は,死の不安を軽減し,望む終末期療養の実現や,より質の高い終末期ケアの提供につながるとの仮説を検証することにある.加えて②対象の特性や目的に応じたDEのプログラムを開発し,その効果と影響を検証することを目的にしている.そして,③質の高い終末期療養推進のため,看護教育や啓発活動に活用できる知見を得ることを本研究の目的としている. 平成29年度の一般市民や医療者への調査結果から,一般市民や医療者ともに必要とされているDE内容はアドバンス・ケア・プランニング(ACP)に関する事であることが明らかになった.平成29年度実施状況報告書「今後の研究の推進方策」で記したように,平成28年度の実験結果から当初の研究計画書で平成30年度に実施予定であった実験2は実施せずに,ACPに関連するDEパンフレットを作成し,介入によりその有効性を検証する計画に修正した. 修正計画通り,平成30年度ではACPに関するDE学習教材としてパンフレットを作成し,看護系大学生やそれ以外の大学生,一般市民,医療者にそれを用い,学習の効果をアンケート調査から検討した.またDEやACP学習効果を判定するのに,河野(2005)の死観尺度を基にACP尺度を開発した.DE学習パンフレット用いた学習の結果,家族や近しい人と看取りや終末期の希望に関する話し合いについては,講義前では74.8%の人が希望を伝えていないと回答していたが,講義後99.1%の人が講義を聞いて話し合う必要性が理解できたと回答し,87.6%の人が今後,話し合うと回答した.また一般市民や看護系大学生ともにACP尺度得点を分析した結果,講義後の死から「逃避」は中位点を下回り,ACP「実施認識」は中位点を大きく上回ったことからDEとしてACPの学習効果があり,パンフレットの有効性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書や研究目的の通りに実験・調査を実施・終了でき,貴重なデータを得ることができたため,研究は順調に進展していると思われる.とりわけ研究当初に計画していた通りに,生理学的指標を用いて実験的に恐怖管理理論の視点からの仮説の検証を試みたのは本邦初であり,学術的に価値が高いデータが得られ,現在専門学術雑誌への投稿準備中である.そして河野(2005)が開発した自己と大切な他者の死観尺度の再検査信頼性を検証し,新性格特性との関連から 併存的妥当性の検証も行えた.また,対象の特性や目的に応じたデス・エデュケーション(以下、DEと称す)のプログラムを開発するために,市民講座受講者や学会参加者・医療者に対する質問紙調査を実施した.その結果,求めれれるDEプログラムとして,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)との関連が示された.研究目的通りに,平成30年度ではACPに関連させたDE教材を開発し,大学生や看護系大学生,一般市民や医療者にそのDE教材を用いた介入を行い,DEとACPの有効性に関する調査を実施し,DEの有効性を検証できた.また,前年度の実験や調査結果からDEの効果を検証するのにDAS(死の不安)や死観尺度は指標として有効ではないことが示され,DEの効果を検証するため,河野(2005)の死観尺度を基にしたACP尺度を新たに開発し,尺度の信頼性と妥当性の確認を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発した紙面ベースのパンフレットを用いた講義を行うことで,看護系大学生や医療者また一般市民といった所属に関係なくACPの理解度は高まり,デス・エデュケーションの効果はあった事が示された.しかしパンフレット教材を用いたレクチャーであれば,講師の説明が必要となり,講師の説明により有効性は変化すると予測される.個人や組織が講師がいなくても,いつでも必要な時に使用でるようなDEやACPに関する視聴覚教材開発の必要性があると思われた.従って,研究最終年度ではこれまでの研究結果を統合させ,残りの経費を使用してACPに関するDEのDVD教材を開発すること目指す.そして作成したDVDは科研費成果物として広く希望者に配布し,利用できるようにする予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
既に平成29年度の「実施状況報告書」で記載したように,平成30年度に実施予定であった実験2は,平成28年度の実験1の結果より実施中止の計画修正となった.そのため実験2で被験者への謝礼として計上していた1,178,000や実験消耗品の合計約120万円程が不要となった。今後の経費使用計画としては,平成29・30年度の研究推進方策で記したようにDEプログラム開発に重点を置き,そのために経費を使用する.具体的には研究最終年度の平成31年度に研究成果物として,ACPに焦点を当てたDEに関するDVDを作成し,その作成費用と郵送料に充てる予定である.
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