研究課題
我が国において、せん妄を予防するための薬物療法や環境管理などの多面的な側面からの包括的標準プログラムの効果を検証した研究は限られている。急性期病院では、高齢者の入院患者の増加に伴い、せん妄の発生は大きな問題になっていることから、せん妄予防のための標準化された包括プログラムを開発し、その臨床・経済効果を検証することは急務の課題である。そこで、標準化された包括プログラムを展開するツールとして、クリニカルパス(以下CP)を活用し、せん妄予防管理の効果を検討した。研究対象とした急性期3病院のうち、運用まで至った2病院(Aは呼吸器外科病棟、B病院は整形外科病棟の患者)を対象とした。A病院では、どの患者でも汎用的に活用できるせん妄予防管理のケアパスを作成した。B病院では、既に活用されているCPに、せん妄予防管理の項目を設定した。CP導入前期間は令和1年9月~11月、 CP導入後期間は令和1年12月~令和2年2月とした。A病院、B病院ともに、CP導入前後で、せん妄の発生件数、入院期間に統計的有意差は認められなかった。しかし、A、B病院ともに、せん妄の発生率は減少していた。また、インシデントの発生件数も減少していた。A病院では、ベンゾジアゼピン系薬を処方された患者が、CP導入前は24人(11.7%)であったが、CP導入後は9人(4.6%)であり、統計的有意差が認められた(Chi-squared test、p<0.05)。B病院では、CP導入前にブロチゾラムの定期処方有が4件、エスゾピクロンの定期処方が3件であったが、CP導入後はいずれも0件となった。スボレキサントの定期処方は、CP導入前が0件であったが、CP導入後は4件となった。せん妄予防管理のCPのさらなる標準化を進め、運用することにより、せん妄の発生率の低減への貢献が期待される。
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日本クリニカルパス学会雑誌
巻: 21(2) ページ: 83-84
ナーシングビジネス
巻: 13 ページ: 972-978