研究課題/領域番号 |
16K11986
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
菅野 亜紀 神戸大学, 医学部附属病院, 特命助教 (20457039)
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研究分担者 |
高岡 裕 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (20332281)
藤原 由佳 神戸大学, 医学部附属病院, 看護師 (40314489)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 看護記録 / 診療録監査 / 自然言語処理 |
研究実績の概要 |
看護情報システムでは、ボタン入力やプルダウンから定型文選択での入力が可能であり、看護記録の量的・質的向上に大きく寄与した。しかし経過記録等ではSOAP形式での自由文入力が必要であり、看護情報システムが質的担保する訳ではない。よって質的点検(内容監査)が必須であり、実際のような体制をとって監査している。というのも、看護記録を含む全ての診療記録の質的監査は、(公財)日本医療機能評価機構の病院機能評価の評価項目(3rdG:Ver.1.1の2.1.2「診療記録を適切に記載」)であり、質的監査の実施が求められているからである。 我々はこれまで自院の看護部門の協力を得て、自然言語処理技術を医療分野に応用する研究に取り組んできた。これらの研究の過程で、患者向けの医療文章の自動点訳では、同音異義語や敬語が誤解を生じる可能性と、文字数を増加させる問題を見出した。そこで、視覚障害者が理解しやすい文章へ自動変換するプログラムを研究開発した結果、形態素解析と係受け解析による文章解析がプログラムとしての実装を可能にすることを明らかにした。 そこで本研究は、この技術の利用により看護記録中の不適切な用語の使用や文章の構文構造の解明と、将来的には修正文章候補の自動提示まで可能にすることで看護記録の質的向上実現を見据えている。そして、これらの自動化を最終目標に本研究に取り組んでいる。初年度の平成28年度は、看護記録の中で判読性には劣るが記載条件を満たした記載(以後、「原文」)を選択し、我々が開発済みの文章変換プログラムで一次処理した。一次処理後の文章は修正され簡潔で明瞭な文章に変更された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電子カルテの中の看護記録のうち、記載条件を満たした記載(以後、「原文」)から、判読性に劣るものを選んだ。選んだ原文の文章は個人情報を除外し、我々が開発済みの文章変換プログラムで一次処理した。これを原文コーパスとした。次に、看護情報・記録委員会が作成した看護記録マニュアルや看護記録表現事例集を参考に簡潔で明瞭な文章に修正を加えた。この後、看護記録として妥当な記載かどうかを最終判定し正解例(以後、「修正文」)とする予定である。これら原文と修正文の対を、看護記録コーパスとする。 このような研究には、原文と修正文が数万対の大規模なコーパスが必要とされていたが、実際に数百~数千対の規模のコーパス使用で研究成果があがっており、研究遂行に問題は無い。 看護記録として妥当な記載かどうかを最終判定し正解例を確定する段階の取り組み開始するところであり、看護記録コーパスを作成中であるため、当初計画よりやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
速やかに看護記録の記載として妥当かどうかを最終判定し、修正文を完成させる。その後、引き続き文章の形態素解析・係受け解析に取り組む。具体的には、コーパス内の文章を形態素解析ソフトMeCabで形態素解析する。その出力は、見出し語、品詞、品詞細分類、活用型、活用形、読みとする。次に、文章を係受け解析ソフトCaboChaで係受け解析し、文章を文節単位に分割して文節の係り受け関係を出力させる。以上の出力結果を解析に供し、特徴や規則性の抽出に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
看護記録コーパスを作成中であり、まだ完了していないために次の解析ステップに取り組めず、差額を生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
看護記録コーパス作成を速やかに完了させ、形態素解析・係受け解析や文章の係受け解析に駒を進める。
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